サルビアの育てかた
俺は握り拳にして、彼女の体から離れると勢いよく立ち上がった。
「お前、本気で言ってんの?」
「……そうだよ」
「ふざけるな!! お前のことを大切に育てたのが誰なのか忘れたのか。レイが……レイ自身があの女の娘だと認めたら、父さんと母さんは悲しむぞ……!」
「……」
レイは俯き、何も答えてくれなくなった。それどころか、目も合わせてくれない。
俺にはどうしてもレイの気持ちが分からない。分かろうとしても、無理なんだ。だって俺とレイは、生まれたその瞬間から境遇が違いすぎる。
支えられると思っていた。今までずっと彼女のそばにいた俺なら守れると思っていたのに。
だけど、本当にそれだけだった。たまたま俺たちの家族になったレイのそばにいただけ。
俺が勝手に彼女のことを好きになり、未来も一緒にいられると幻想を描いていただけなんだ。
「外の空気吸ってくる」
今日は俺が衝動的に、外に出て行く日だった。コートを羽織り、無心で玄関の扉を開ける。
レイは何も言うこともなければ、俺を止める気配すらない。
──もう完全に終わった。俺とレイは最初から上手くいくわけもなかったんだ。
外に出ると俺の頬は少しの風に触れただけで氷のように冷たくなっていった。