サルビアの育てかた
 自暴自棄になった俺は、氷のような指先で悲しい光を放つ指輪を掴み取る。
 上手く力が入らないのはなぜなんだ。どうにかして指輪を荒々しくギュッと握りしめてみせた。
 静かに流れるテムズ川をじっと眺める。こんな時期に寒中水泳なんてしたら、風邪を引くだろうな。そんなことを考えた。

「お前の出番は、一生来ないよ」

 誰の耳にも届くことのない失望の叫び声。
 ピンクダイヤが壊れるのではないかと自分でも勘違いしそうになるほど、更に拳を強く握り締めた。腕を高く高く上に伸ばす。

 ──レイとの未来も、彼女と思い描いていた幸せな家庭も、全部投げ捨ててしまおう。
 そう思いながら、拳の中にある指輪をテムズ川に向かって放り投げようとした、正にその瞬間。

「何してるのよ!!」

 耳が痛くなるほどの怒号と共に、誰かが俺の腕を強い力で掴んできた。
 邪魔するな。
 そう言ってやろうと後ろを振り向く。するとそこには、息を切らせてこちらを睨みつける俺の良き理解者がいたんだ。

「……フレア?」 
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