サルビアの育てかた
 俺が唖然としていると、フレアは眉間に皺を寄せ、今まで見たこともないくらいに息を荒くしている。そして、低い声で言う。

「ちょっと一発引っ叩いていい?」
「えっ」
「悪いけど我慢ならないわ!」

 そう言われた瞬間、俺の左頬が何とも言えない衝撃が走った。
 ──痛い。
 だけど、何も反応出来なかった。目の前でフレアが怒ったような、悲しんでいるような、複雑な表情で俺を見ていたからだ。
 その右手は微かに赤く変色している。

「ヒルス。いい加減にしなさいよ。急にあなたがここに呼び出すから、何事かと思って急いで来てみれば。信じられないことをしようとしていたわね!」
「……」

 フレアの怒りに圧倒され、俺は口を開くことすら出来ない。
 ああ、そうだ。家を飛び出した時、俺はまたフレアにHELPメッセージを送ったんだ。フレアには家庭があるから、本当に来てくれるとは思ってもみなかった。
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