サルビアの育てかた
 だけど──なぜだろう。何だかこっちまでおかしくなってくる。フレアの様子を見ていたら、釣られるように俺まで声を出して笑ってしまった。

「おい……本当に勘弁してくれ」
「そう言うあなただって、笑ってるじゃない!」
「ち、違う。フレアがニヤニヤするからだろっ」
「何よ、人のせいにするつもりっ」
「そういう訳じゃ……」

 違う、そういう訳だ。俺は何を否定しようとしている?

 でも──これは一体どういうことなのか。少し笑い声を上げただけで、さっきまでの暗い気持ちがずいぶんと楽になった気がする。
  
 ひと通り笑い転げた後、俺たちは気持ちを切り替えるかのように急に静かになった。
 いや、フレアの口角はまだ少し上がっていたが。俺の目をしっかり見つめてきて、あくまで声は冷静なものに変わっていった。

「ね、ヒルス」
「何だ……」
「諦めないで」
「え?」
「レイちゃんのこと、諦めちゃ駄目よ!」

 フレアは真剣な眼差しを俺に向けた。

「レイちゃんの生まれた事情が複雑なのは分かる。極普通の家庭に生まれてきたわたしたちには到底理解出来ないほど、レイちゃんは苦しんでいるんだと思う」
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