サルビアの育てかた
 フレアのこの言葉を聞いた瞬間、昼間ロイが言っていたことが俺の頭の中を通過していく。

『どうしてあんな親の元に生まれたんだろう』
『考えるほど苦しくなる』

 何度も思うが、俺は二人の辛い気持ちを全て理解することは出来ない。
 そんな中でもロイのあの言葉は、俺の中で本当に貴重なものだ。

「どんな親から生まれてきたって、周りにいるわたしたちは誰も気にしていないわ。レイちゃんはレイちゃんなんだから。ヒルスもそう思ってるでしょう?」

 フレアは柔らかい表情を浮かべて俺に問うんだ。さっきまでのふざけた雰囲気なんて全くない。

 ……凄いよな、フレアの言葉は。じんわりと俺の心をあたたかくしてくれる。

 俺はフッと微笑み返した。

「もちろんだ。昔から俺は、レイ自身が好きだからな」

 レイを肯定する俺に対して、フレアはまた小さく肩を震わせている。いつも俺の言動に笑いが止まらなくなるフレアの反応は、何だかんだで嫌いじゃなかった。

 顔は少し赤くなりつつも、フレアは落ち着いた話しかたで続ける。

「だったら、早く帰ってあげて。もう一度レイちゃんに伝えてあげてよ。ヒルスの気持ちを」

 その一言は、風に乗って街の灯りの中へと溶けてなくなっていく。だけどその言葉は、目の前に広がるどのイルミネーションよりも綺麗で、俺の気持ちに光をくれたんだ。
 おかげで、俺自身も大切なものを思い出せた気がする。
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