サルビアの育てかた
 家を飛び出した時の暗い気持ちはどこかへ置いてきた。でも、面と向かってレイと話をするのはまだ少しだけ怖い。

 彼女のあんな姿を見てしまったから。

 レイは相当傷ついている。体だけでなく、心さえも。
 どこまで彼女に俺の気持ちが伝わるだろうか。何事もなかったように振る舞い、一緒にビーフシチューを食べながら落ち着いて話をした方がいいのだろうか。

 途中赤信号に掴まってしまった。俺の心は少しばかり焦っている。

(そうだ。レイにもうすぐ帰るとメッセージを送ろう)

 そう思い、コートのポケットからスマホを取り出すが──
 虚しくも、画面は真っ黒になっている。電源を入れようとしても、ゼロ%の文字が画面に映し出されるだけだった。

 ああ、クソ。俺の良くない習慣だ。普段から必要最低限しかスマホを弄ったりしないので、電池が切れそうになってもなかなか充電すらしない。
 こんな自分に舌打ちをしてしまう。

(レイは今頃どうしているのかな。……シチュー、一緒に食べたいな)

 そんなことを考えながら、寒空の下バイクを飛ばしていく。
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