サルビアの育てかた

 理解出来ない。受け入れられない。俺のそばから離れるような真似だけは絶対に許さない!
 俺たちはこれまでもこれからも、一緒に生きていくんだ。二人で幸せになると決めた。こんなところで諦めてたまるか!

 エレベーターから降りると、俺は駆け足でエントランスを抜けて行く。目指す場所は、きっとその時点で決まっていた。
 
『フラットの目の前にある公園に、あの悪魔が立ってたんだよ』

 先程彼女が言っていた言葉を思い出す。目的地が正しいのか定かではない。でも俺の直感は、きっと間違っていないだろう。

 ──ヒルス、助けて。

 レイの、そんな叫び声が聞こえた気がした。俺の意識の奥底に、直接声を届けに来ている感覚がしたんだ。
 全速力で走り抜け、息が上がるほどに夢中で夜道を駆けていく。

 ただ単に、俺は彼女とのなにげない日常を失いたくないだけだ。他愛のない話をしながら美味しいご飯を食べて笑い合いたい。あたたかいベッドで二人で寄り添い、新しい朝を迎える。たったそれだけの日々が幸せだ。
 守るから。絶対に守ってみせるから。
 その一心で、俺は夜の道を駆けていき、公園を目指した──
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