サルビアの育てかた
 公園の前に辿り着いた頃には、目眩がするほど息切れしていた。目の前にある公園の出入り口に視線を向けるが、街灯が少なく、中の様子が見えづらくて仕方がない。

「レイ……」

 出せない声を力の限り解き放ち、愛する彼女の名を呼ぶ。

「レイ、いるか? いたら返事をしてくれ!」

 かすれた俺の声は、虚しくも闇に覆われた公園内に小さく響き渡り消失していく。

 もっと……もっと大きな声で叫ばないと駄目だ。これではレイに届かない。声を張り上げて彼女を呼び続けなければならない。
 レイまで失ってたまるか。俺は……俺たちは、大切な家族を亡くした。父と母がいなくなったあの日から、二人きりになってしまったんだ。こんなところで、彼女と離ればなれになるわけにはいかない。

 どんなに身体が強張っていても、俺は必死になって暗い公園内を歩き回った。昼間は楽しそうに揺れているブランコも、子供たちのはしゃぐ声を乗せているすべり台も、疲れた足を休ませてくれるベンチさえも。夜は皆寂しそうに立ち尽くしていた。
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