サルビアの育てかた
 母は穏やかな口調で、ヒルスを諭すように語り始めた。

「何があっても、あの子はわたしたちの大切な家族よ。たとえ血の繋がりがなくても(・・・・・・・・・・・・)普通に接していきたいの。反抗期なのだとしたら、むしろ嬉しいわ。家族として見守っていきましょ」

 母のその言葉に、私の胸がドクン、と唸る──

『たとえ血の繋がりがなくても』

 このたった一言が、私にとっては全身にのし掛かる重い岩石のように感じられた。胸が、痛くて苦しい。

「まあ……母さんの言うとおりだけどな。ここ最近、レイはダンスだけじゃなく学校もサボるようになったんだろ? 俺も心配なんだよ」

 ヒルスのその言葉に、父は声を微かに震わせながら答えた。

「話を聞こうとすればするほど、レイは嫌がるからな。このままにしておくわけにはいかないが、本人の気持ちを尊重すべきだ」

 どれだけ家族に心配をかけているのか、実感してしまう。私の言動がよくないものだって、ちゃんと理解はしているの。

 だけど……。
 気持ちの整理がつかないんだよ。自分が血の繋がっていない娘なんだという事実を、これで確信してしまったから。

 ──その後も、三人が楽しそうに話し込んでいるのが聞こえてきた。真面目な話も、他愛ない話も、気兼ねなくできる家族の形。素敵だった。素敵すぎて、益々寂しくなる。

 こんなにも良い家庭に入れてもらった喜びと、その輪に入ったとき一人だけ距離を感じるかもしれないという切なさ。自分の中で葛藤するこの気持ちを、取り除けない。
 家族のことが大好きだからこそ、だよ……。
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