サルビアの育てかた
 絶望的だと思い始めた時だ。俺はまたもや妙な胸騒ぎがした。背中にゾワッと寒気が走る。

 背後を振り向くが──誰がいるわけでもない。

 遠くを見やると、原っぱの先に小さいながらも植物園があるのが見えた。この時期によく見られる白い花がたくさん咲いているのが遠目で確認出来る。
 この奇妙な感覚は、一体何なんだろう。俺は何かに導かれるように、遠目に見える植物園の方に足を向けた。

 ──ヒルス。

 どこからともなく、声が聞こえた気がした。小さくて聞き取りづらい。もしかして気のせいかもしれない。
 しかし。

 ──助けて、ヒルス……。

 もう一度、確かにか細い叫び声が、俺の耳の中に響いてきた。
 違う。気のせいなんかじゃない。

「レイ……?」

 彼女だ。
 声のする方へ、俺は足を走らせた。

 震えていた。弱々しく、怯えているのが分かる。彼女が、レイが、ピンチなんだ。

 助けに行かなければならない。俺はレイのスーパーヒーローだから。どんなことがあっても、必ずレイを助けるのが俺の役目。
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