サルビアの育てかた
 無我夢中で駆け抜けるうちに、どうやら目的地に辿り着いたようだ。しかし、目の前に広がる光景がどういうことなのか、瞬時に理解を得るのは難しかった。

 白い花が咲き並ぶ花壇の隣で、彼女が──レイが佇んでいた。肩に力が入っているのだろうか、一点に目を見据えながら固まってしまっている。
 姿を捉えた瞬間、俺は叫ばずにはいられなくなった。

「レイ!!」

 声に気づいた彼女は、ハッとしたようにこちらを振り返った。けれどもその顔は、見る見る青白く変色していく。
 大きく首を横に振ると、レイは掠れた声を出した。

「ヒルス、来ちゃ駄目……!」

 すぐにレイの視線は俺から外れていく。真っ直ぐ前を見る彼女の様子がおかしい。
 俺は息を呑んだ。心臓の鼓動音が、 耳の奥まで鳴り響いてくる。
 確認しなくても、レイの震える様子を見ただけで分かっていた。恐怖の対象──あの、悪魔がいることくらい。

 大丈夫だよ、レイ。怖がる必要なんてない。レイのスーパーヒーローが来たんだ。
 俺がしっかりと君を守るから。悪魔になんて負けない。もう二度とレイが苦しまないように、ちゃんと悪魔を追い払ってやる。

 心の中で語りかけながら、俺の視線はゆっくりと悪魔の方へと移っていく。
 しかしそこには──想像すらしていなかったおかしな光景が広がっていて。
 言葉を失う。
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