サルビアの育てかた
 俺の意識はどこにあるんだろう。寒さも熱さも痛みも、何の感覚もない。
 目の前はただ真っ白で、俺は独り横になって動けずにいた。

 途切れ途切れではあるが、騒々しい音が響き渡ってくる。意識の遥か遠くの方で、甲高いサイレンが鳴っているのが聞こえた。
 その中に、俺の名を呼ぶ声が混じっている気がした。 
 だけど、そのか細い声は泣いている。まるで絶望に支配されたような、悲しいものだった。いつも優しくて可愛らしくて、愛情を乗せた柔らかいものなんかじゃない。

 そんな声で俺を呼ばないでくれ。君の、甘えたような愛くるしい言話しかたが大好きなのに。どうして君はずっと泣いているの。どうしてそんなに震えているの。俺のそばにいる時だけは、いつだって笑ってほしいんだ。

 俺の目の前は真っ白の世界に支配されたまま。そして、暗闇の中に消えていった。
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