サルビアの育てかた
 ……何だか妙だな。夢だと分かっているはずなのに、今目の前にある全ての映像が、俺の中にすっと溶け込んでいるような感覚になる。まるで、現実世界にいるのかもしれないと錯覚してしまうほどに。

 母が用意してくれた朝ごはんはサンドウィッチだった。食べてみると、パンの甘みとシャキッとした食感の瑞々しいレタス、塩っ気のきいた玉子の味がマッチしていて美味しい。味覚までこんなにハッキリしているなんて、今日の夢はとてもリアルだ。
 そんな中で唯一、目に見えない透明(・・)の存在があった。

「お兄ちゃん、そろそろ行こうよ」

 声に反応して振り返ると、目の前に一人の少女が立っていた。その子だけいつもぼやけていて、相変わらず顔を認識することが出来ない。でも何となく、優しい表情をしているような気がする。

 分かってる。この子は俺の妹のリミィだ。いつも夢を見る時は、彼女が生きている世界なんだ。
 きっと妹は俺の影響でダンススクールに通っていて、毎日楽しく踊っている。母に頼まれてスクールの送り迎えも、俺がバイクで毎回しているんだ。
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