サルビアの育てかた
◆
暗い気持ちのまま、俺はその後一人で帰路についた。
夜の田舎道。俺が乗るバイクのエンジン音のみが鳴り響く。
いつも感じていたはずの彼女のぬくもりはない。
当たり前に後ろに乗っていたレイ。振り返ったとしても、その笑顔を見ることすらできないんだ。
ハニーストーンの家々を照らすオレンジ色の淡い灯りが、俺の目には滲んで映ってしまう。
「おかえりなさい」
実家に着くと、母が出迎えてくれた。
ダイニングのテーブルには一人分のスープとシェパーズパイが静かに俺の帰りを待っていた。パイから漂うマッシュポテトとひき肉の香りが食欲をそそる。
けれど気持ちは沈んだまま。
レイが隣にいないディナーは、寂しい空間に変わってしまう。
「母さん、レイは?」
「ついさっき帰ってきたわ。ごはんは少ししか食べてくれなくて、今はお部屋に篭もってる」
「相変わらずだな……」
俺はあたたかいスープを一口飲んでから呟いた。
「どうしてあいつはダンススクールを辞めたんだろうな」
「詳しいことは分からないわ。でも……あの子、急にお金がどうとか言い始めて」
「は?」
「スクールの月謝がかかるからとか言うのよ。わたしもお父さんもそんなの全然気にしてないから、続けてほしいと伝えたんだけどね。でも、あの子ったらまた怒っちゃって。『私のために無駄な気遣いしないで。もうスクールには行かないから!』って……」
「なんだそれ」
わけが分からなかった。そんな理由であいつがスクールを辞めるはずがない。
父も母もレイが踊るのをいつも応援していた。
急にお金のことを気にしたりするのは違和感がある。
本当の理由は他にあるに違いない。でも、今の俺にはそれがなんなのか見当もつかなかった。
暗い気持ちのまま、俺はその後一人で帰路についた。
夜の田舎道。俺が乗るバイクのエンジン音のみが鳴り響く。
いつも感じていたはずの彼女のぬくもりはない。
当たり前に後ろに乗っていたレイ。振り返ったとしても、その笑顔を見ることすらできないんだ。
ハニーストーンの家々を照らすオレンジ色の淡い灯りが、俺の目には滲んで映ってしまう。
「おかえりなさい」
実家に着くと、母が出迎えてくれた。
ダイニングのテーブルには一人分のスープとシェパーズパイが静かに俺の帰りを待っていた。パイから漂うマッシュポテトとひき肉の香りが食欲をそそる。
けれど気持ちは沈んだまま。
レイが隣にいないディナーは、寂しい空間に変わってしまう。
「母さん、レイは?」
「ついさっき帰ってきたわ。ごはんは少ししか食べてくれなくて、今はお部屋に篭もってる」
「相変わらずだな……」
俺はあたたかいスープを一口飲んでから呟いた。
「どうしてあいつはダンススクールを辞めたんだろうな」
「詳しいことは分からないわ。でも……あの子、急にお金がどうとか言い始めて」
「は?」
「スクールの月謝がかかるからとか言うのよ。わたしもお父さんもそんなの全然気にしてないから、続けてほしいと伝えたんだけどね。でも、あの子ったらまた怒っちゃって。『私のために無駄な気遣いしないで。もうスクールには行かないから!』って……」
「なんだそれ」
わけが分からなかった。そんな理由であいつがスクールを辞めるはずがない。
父も母もレイが踊るのをいつも応援していた。
急にお金のことを気にしたりするのは違和感がある。
本当の理由は他にあるに違いない。でも、今の俺にはそれがなんなのか見当もつかなかった。