サルビアの育てかた
 そんなことを考えていると、レイは急に静かになって俺の胸の中に顔を埋めた。しっかりと俺の背に腕を回して身体を強く抱き寄せてきたんだ。

 何度やられても慣れることはない。ドキドキが止まらなくなって、全身が急激に熱を上げる。
 たまらず俺もレイの腰に両手を回し、全てを包み込んだ。

「ヒルス……」
「何?」
「……おかえり」

 まるで天使の囁き声だ。
 もう、彼女のことが好きで好きでたまらない。
 俺は、レイだけに聞こえる声量で静かに答えた。

「ただいま、レイ」

 彼女はゆっくりと顔を上げる。美しく輝くその瞳に見つめられると、たちまち俺の顔から火が吹き出そうになるんだ。

「ヒルスは凄いね。眠っていた時、あんなに苦しそうに唸っていたのに……ちゃんと戻ってきてくれた」
「俺、苦しそうにしていたのか?」
「うん。何もしてあげられなくてごめんね」

 レイの声は切なさが混じっている。
 でも俺は、首を小さく振ってから彼女の頭を優しく撫でた。

「レイが俺を呼び続けてくれたから、戻ってこれたんだ。それに……妹が──リミィが助けに来てくれたから」
「えっ、お姉ちゃんが?」
「ああ。ただの幻想かもしれないが。意識の奥底まで、リミィが会いに来てくれた気がするんだ。『レイを独りにしたら許さない』と言われてな。鬱陶しいくらいに怒ってたよ」
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