サルビアの育てかた
◆
イベントが終わり、俺は帰る支度も済ませてひと息ついていた。控え室で籠っているのも息苦しいので、少し会場を散策してみる。
すると、俺の存在に気付いた子供たちが笑顔で手を振ってくるんだ。
「お兄ちゃん今日のダンスかっこよかったよ!」
「すっごく楽しかった!」
次々に声をかけてくれた。
子供たちの中で、一番背の高い黒髪の少年は満面の笑みで「また素晴らしいダンスを見せてください」
瞳をきらきら輝かせながらそう言うんだ。俺は笑みを浮かべ、彼らに手を振り返す。
「いつでもまた踊るよ」
子供たちは嬉しそうに「ありがとう!」と言って帰っていった。俺の思いはどうやら届いたらしい。
「そこのお兄さん、ちょっといいですか」
俺が穏やかな気持ちでいると、突然、見知らぬ中年女性に声を掛けられる。その人はなぜか、微笑みかけてきた。
「なんですか?」
その人はしばらく、じっと見つめてくる。
「……あの。俺の顔に何かついてます?」
「いいえ、そういうわけではないです。ごめんなさいね、急に話し掛けてしまって。少し外でお話しませんか?」
踊ったばかりで疲れているんだがな……俺は眉をひそめながらどう断ろうかこっそり考えた。
しかし、女性は小声でこう言うのだ。
「レイちゃんはお元気ですか」
「えっ。レイの知り合いなのか?」
「はい。もちろん知っていますし、お父様たちにもたくさんお世話になっていますよ」
「……」
今度は俺が、女性をじっと見つめる番だ。脳裏に、幼い頃の記憶が一瞬蘇る。
この柔らかい笑みを浮かべるこの人はまさか。──そうだ、間違いない。
「……お久しぶりです、シスター」
その女性は、レイが俺たちの家族になる前に彼女を孤児院で保護し、大切に育てていた人だったんだ。
イベントが終わり、俺は帰る支度も済ませてひと息ついていた。控え室で籠っているのも息苦しいので、少し会場を散策してみる。
すると、俺の存在に気付いた子供たちが笑顔で手を振ってくるんだ。
「お兄ちゃん今日のダンスかっこよかったよ!」
「すっごく楽しかった!」
次々に声をかけてくれた。
子供たちの中で、一番背の高い黒髪の少年は満面の笑みで「また素晴らしいダンスを見せてください」
瞳をきらきら輝かせながらそう言うんだ。俺は笑みを浮かべ、彼らに手を振り返す。
「いつでもまた踊るよ」
子供たちは嬉しそうに「ありがとう!」と言って帰っていった。俺の思いはどうやら届いたらしい。
「そこのお兄さん、ちょっといいですか」
俺が穏やかな気持ちでいると、突然、見知らぬ中年女性に声を掛けられる。その人はなぜか、微笑みかけてきた。
「なんですか?」
その人はしばらく、じっと見つめてくる。
「……あの。俺の顔に何かついてます?」
「いいえ、そういうわけではないです。ごめんなさいね、急に話し掛けてしまって。少し外でお話しませんか?」
踊ったばかりで疲れているんだがな……俺は眉をひそめながらどう断ろうかこっそり考えた。
しかし、女性は小声でこう言うのだ。
「レイちゃんはお元気ですか」
「えっ。レイの知り合いなのか?」
「はい。もちろん知っていますし、お父様たちにもたくさんお世話になっていますよ」
「……」
今度は俺が、女性をじっと見つめる番だ。脳裏に、幼い頃の記憶が一瞬蘇る。
この柔らかい笑みを浮かべるこの人はまさか。──そうだ、間違いない。
「……お久しぶりです、シスター」
その女性は、レイが俺たちの家族になる前に彼女を孤児院で保護し、大切に育てていた人だったんだ。