サルビアの育てかた
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私が事実を知ってから二年が経った現在。ダンススクールも結局辞めてしまった。
両親はもちろん、ダンス仲間もヒルスも、とてもショックを受けていた。何度も何度もしつこいくらいにスクールに戻ってほしいと言われた。ヒルスなんて、嘆きながら私にダンスを続けてほしいとお願いしてきたことさえある。
だけど、みんなの願いには応えられない。ダンススクールには怖くて戻れない。
父と喧嘩をして、家出みたいなことをしている十四歳反抗期娘を演じているのが今の私。自分の身上の事情にショックを受けて立ち直れない、弱い人間なの。
過去のことをあれこれ考えていたら、いつの間にか繁華街まで行き着いていた。
ハイ・ストリートを歩いていると、飲食店からいい匂いが漂ってくる。その美味しそうな香りに、お腹が空いていることに気がついた。足も疲れてもう限界。
パブの横を通りすぎると、窓越しでお酒を飲みながら顔を真っ赤にしている大人たちが、わいわい楽しそうにしているのが見えた。私がどんなに沈んだ心の中にいても、世界は何も変わらない。まるで私だけが、孤独の中に閉じ込められて生きているようだった。
ふらつく足のまま、私は無意識にダンススクールを目指して歩いていた。気持ちを誤魔化していても、身体は正直だ。
結局、私はスクールの前に辿り着いてしまった。
「疲れた……」
誰に向けたわけでもない嘆きの言葉。
夜遅いからレッスンはとっくに終わっている。きっと、ジャスティン先生も他の誰もいないよね。
二年前まで毎日のように通っていたダンススクールは、今も変わらない石造りの建物で雰囲気もそのままだった。
私は崩れるように扉付近の外壁に寄りかかってしゃがみこむ。