国の擬人化達との同居生活
みんなが片付けに動き出して、リビングの賑やかさが少しずつ遠のいていく。
食器が触れ合う音、台湾くんの「そこ置いといて」って声。
でも、私は手を動かす気になれなかった。
フランスくんの言葉が、耳の奥にまだ残ってる。
―――『あの子の名前をお前が口にするな』
あんな声、初めて聞いた。
普段の柔らかい笑い方とか、少しおどけた喋り方とか、全部が仮面みたいに思えてきて。
胸の奥がざわざわして、落ち着かない。
気付けば、イギリスくんを呼び止めていた。
「ねぇ、イギリスくん」
「ん?」
「魔女って、、、何?」
イギリスくんは動きを止めた。
ちょうど手にしていたティーカップが、かすかに揺れて音を立てる。
「、、、どうした、急に」
「さっき、イギリスくんが魔女って、、、」
問いかけた瞬間、部屋の空気が少し冷えたような気がした。
テレビを見ていたみんなの笑い声が遠くに消えていく。
イギリスくんはしばらく黙っていた。
やがて、深く息を吐いて、目線を逸らした。
「、、、ジャンヌ・ダルクは、フランス軍に身を投じた少女剣士だ」
「少女剣士、、、?」
私が聞き返すと、イギリスくんはゆっくり頷く。
「そうだ。十五世紀、百年戦争の時。神の声を聞いたと言って、王太子を励まし、兵を導いた。その存在はまるで奇跡だ。フランスを敗北から救ったんだからな」
イギリスくんの声は静かで、けれど、どこか遠くを見ていた。
「、、、でもな、同時に“異端”だった。年若い娘が男装して剣を取り、神を名乗る。当時の教会も、俺達も、そんな存在を恐れた。それで、捕らえて―――」
言葉が途切れた。
ティーカップの中の紅茶が、静かに揺れる。
「、、、魔女として、火刑に処した」
「何で、、、!?」
イギリスくんは、僅かに顔を歪めた。
「もう俺から話すことはない。詳しく聞きたいなら―――フランス(アイツ)に聞け」
その声は、静かで、それでいて、どこか突き放すようだった。
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