【番外編】孤高の弁護士と誓いの光 — 未来へ紡ぐ約束
玄関の扉が、控えめに開く音がした。

(あ、帰ってきた)

紬はカレーの火を一度止めて、手早くコンロ周りを拭いてから、バスタオルを肩にかけたまま廊下へと足を向けた。

湯上がりの髪からは、ほんのりシャンプーの香りが漂っている。

「おかえり」

声をかけると、廊下の奥から「ただいま」とだけ返ってくる。言葉のトーンはそっけなく、視線すら合わない。

(やっぱり……)

ジャケットを脱ぎながらクローゼットに向かう隼人の横顔には、はっきりと“拗ねています”というサインが出ていた。

眉間にしわ、口元は真一文字。

紬は内心でため息をつきつつ、寝室のドアをそっと開けた。

「隼人くん、カレーできてるよ」

「……うん」

返ってくる声はまたも短くて、感情の色が薄い。
まだ目は合わせてくれない。

紬は無言のまま寝室の壁に寄りかかり、Tシャツに腕を通す隼人の背中をじっと見つめていた。

仕事帰りの、少し疲れの残る背中。
そのどこか寂しそうな気配に、胸がぎゅっとなる。

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