【番外編】孤高の弁護士と誓いの光 — 未来へ紡ぐ約束
着替え終えたその瞬間——紬は足を踏み出した。静かに、でもまっすぐに隼人の元へ。

そして、両腕でぎゅっと彼の身体を抱きしめる。上目遣いでその顔を見つめ、そっと囁いた。

「隼人くん……私が愛してるのは、隼人だけだよ。今までも、これからも」

「…………」

「隼人の辛いことも、幸せも、全部私は知ってる。私以上に、隼人を大切に思ってる人、この世界にいないよね」

隼人の口元が、ようやく少し緩む。

「……わかってるよ。……でも、いや」

その素直すぎる返答に、紬は思わず小さく笑ってしまいそうになる。

(もー……かわいいな)

「まだ“いや”って言うの? 今日、カレー愛情込めて作ったのにさ」

「……俺だけの紬なのに。他の人に優しくしないで。笑いかけないで」

「またそんなこと言って……あれは営業スマイルでしょ?」

「違う。本気スマイルだった」

ちょっと拗ねた子どもみたいな言い方。
思わず抱きしめる腕に力が入る。

(こんな冷徹弁護士、どこ行ったのよ……)

「……このままいても、埒が明かないなぁ」

紬は彼の胸元に顔を寄せながら、ふっと呟いた。

「カレー食べたらさ、いっぱい甘やかしてあげる」

「……どうやって?」

眉がぴくりと動く。
完全に乗ってきた。

「んー、キスも思う存分してあげるし、よしよしもしてあげるし、ぎゅーもしてあげるよ」

自分で言いながら、思わず吹き出しそうになった。
その瞬間——

隼人の表情が、ふわりと変わった。

あれだけ堅かった口元が、頬が、目元が、綻んでいく。

「……じゃあ、食べよっか。カレー」

その笑顔は、法廷で見せるものでも、部下や依頼人に向けるものでもない。
ただひとり、紬にだけ見せる笑顔だった。

(あー……佐藤くん、かわいそうに)

心の中でそっと呟きながら、紬は隼人の手を取った。今日もこの人に甘やかされて、甘やかして、一日が終わっていく。
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