【番外編】孤高の弁護士と誓いの光 — 未来へ紡ぐ約束
食後、食器を片付けたあと、ふたりはいつものソファに並んで座った。
テレビはついているけれど、ほとんど見ておらず、心地よい満腹感が部屋に漂っている。

ふぁ、とひとつ、紬が大きなあくびをした瞬間——

「隙あり」

「んえっ?!」

口を開けたところに、隼人の指がすっと入ってきた。ぬるっと。

「ちょっと! 何すんのっ!」
「あはは、ごめんごめん」
「なにその小学生みたいなイタズラ!」

ぷくっと頬を膨らませる紬に、隼人は笑いながら「でもさ」と言って、紬の頭に手を乗せてぽんぽんと優しく撫でた。

「可愛かったから、つい」
「……可愛いって言えば何でも許されると思ってるでしょ」
「うん、そうだよ?」

即答だった。まったく悪びれる様子もない。

(ずるい……そう言われたら、なんだか怒るのも馬鹿らしくなるし)

「……お腹いっぱいでさ、なんか眠くなってきた」

そう言いながら、紬は腕を伸ばして大きくひとつ伸びをしてから、ソファにどさっと体を預けた。
深く沈むクッションの感触に、思わず目を細める。

「お風呂は?」
「……面倒くさい」

ぼそっと答えると、すかさず隼人の声が低く、そしてどこか企んだように響いた。

「入れてあげようか」

「……!」

その一言とともに、ちらりと横目で覗いてきた隼人の顔。
片方の口角をニヤリと上げた、あの自信満々の笑み。

(やば、今の顔は危険すぎる)

「変態っ!」

ぱっと起き上がると、思わず自分の体を自分の腕で抱きしめるようにして、身を守る。

「ひどい……純粋な思いやりだったのに……」
隼人はわざとらしく目元をこすり、泣き真似をしてみせた。

「ほんとに〜?」
「ほんとほんと。お湯の温度だって、君好みに調整してあげようと思ったのに……」
「信じられない」
「……でも、変態って言われるの、ちょっと嬉しいかも」
「やっぱり変態じゃん!」

声を上げながらも、心の中ではほっこりとしていた。
(こうやって、くだらないことで笑い合える時間が、一番幸せかもしれない)

温かい部屋で、くすぐったいくらいの愛しさに包まれて、今日もふたりは笑い合う。
恋人以上、夫婦未満の、ちょうどいいぬくもり。
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