【番外編】孤高の弁護士と誓いの光 — 未来へ紡ぐ約束
夜の8時を過ぎた頃、ようやく紬は帰宅した。
ドアを閉めた瞬間、張り詰めていた糸がぷつんと切れたように、リビングのソファへとぐったりと身を投げた。

ちょうどそのとき、脱衣所からバスタオルを肩にかけた隼人が出てくる。
濡れた髪を片手でかき上げながら、紬の様子を見て足を止めた。

紬は座り込んだまま、無言で隼人に手を伸ばす。
震えるように指先が揺れていた。

「隼人……怖かった……今日……」

その声はかすれて、小さな子供のようだった。
隼人は一歩近づき、その手をしっかりと握り返すと、黙って紬を胸に引き寄せ、そっと抱きしめた。

「大変だったな」
低く、穏やかな声が耳元に届く。

「でも……大丈夫。法律事務所には俺がいるし、会社にも、ちゃんと味方がいるだろ? みんな、紬のこと信じて動いてる。だから……きっと乗り越えられる」

隼人の腕の中で、紬の呼吸が少しずつ落ち着いていくのがわかる。
安心という感情が、じんわりと彼女を満たしていった。

「よし……」隼人がそっと彼女の背を撫で、やがて軽く背中をポンと叩く。

「早くお風呂入って、今日はちゃんと休もう。明日もあるんだから」

その声はどこまでも優しく、命令ではなく、労わりに満ちていた。

紬はゆっくりと頷きながら、隼人の胸に顔を埋めた。
しばらくは、動けなくてもいい――そう思えるほど、今は彼の存在が心強かった。
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