【番外編】孤高の弁護士と誓いの光 — 未来へ紡ぐ約束
合同対策会議――
社内の大きな会議室に、事故対応部門の実務担当者たちをはじめ、法務部、広報部、今回のために急遽編成された情報収集チーム、そして経営陣の数名が顔をそろえていた。
夕方、時間を繰り上げて招集されたこの緊急会議には、外部からの協力として、隼人、児玉、山崎の三名の弁護士も参加していた。
会議室に現れた隼人たちに、紬はほんの少しだけ安堵の表情を見せる。
「状況は確認しています。ネット上での情報拡散、訴訟を前提とした扇動、クラウドファンディングを含む感情的訴求。すべて、意図的に設計されたものと考えて差し支えないでしょう」
一条の声が会議室に響く。
背後のモニターには、高森のSNS投稿と、それに連なる“被害者の会”のようなタグ付き拡散の画面キャプチャが表示されている。
児玉が口を開く。
「この手の“集団化の動き”に対して、焦って動くと逆効果になります。まずは事実を整理し、法的に問題のある部分に的確に手を打つことが重要です」
「拡散の主要アカウントや関連人物の洗い出し、完了しています。プロバイダへの情報開示請求は順次進めます」と山崎。
情報収集チームのリーダーとすでに連携しているようだった。
法務部長が頷く。
「名誉毀損および業務妨害の立証可能性については、児玉先生から助言をもらって進めてください」
片山が腕を組んだまま言う。
「事故対応部門は過去のやりとりを全件確認する。口頭・書面問わず、時系列で整理して文書化する。…成瀬、お前がまとめろ」
「はい」と紬は短く返し、資料に視線を落とす。
隼人の姿をちらりと横目に感じながら、深く息を吸った。
「広報は?」と経営陣の一人が促す。
「はい、外部向け声明について、法務の監修のもと草案を用意しています。
“当社は一連の対応について法に則って対応していること”、“個人のプライバシーに最大限の配慮をしており、現時点では公表できないことがあること”、“誹謗中傷や虚偽情報には法的対応を検討すること”の三本柱で準備します」
「SNSに公式アカウントで反応するかどうかは、慎重に検討しましょう」と一条が静かに言う。
「こちらが過剰反応しているように見えると、高森側の思う壺です」
「……情報収集チームは?」と片山。
「高森の過去の発信履歴、過去に起こしたトラブル、炎上歴、ネット上の書き込みに見られる傾向などを解析中です。匿名掲示板の書き込みには、高森本人と見られるものも混じっている可能性があります」
会議室には一瞬の静寂が落ちた。
「――動きましょう」
経営陣の一人が静かに言った。
「このままでは、嘘が真実のように広まっていく。事実に基づいた、正当で誠実な対応が我々にはある」
一条がうなずき、静かに立ち上がる。
「私たちは、感情で戦うのではなく、法と事実で戦います」
会議は、まるで歯車が噛み合ったように、それぞれの役割が一気に明確になり、動き出した。
紬も席を立ち、書類を抱えて出口へと向かう。
ふと横を歩く隼人が、ポツリとつぶやく。
「ここからだよ。正念場は」
紬はその言葉に頷き、小さく拳を握った。
社内の大きな会議室に、事故対応部門の実務担当者たちをはじめ、法務部、広報部、今回のために急遽編成された情報収集チーム、そして経営陣の数名が顔をそろえていた。
夕方、時間を繰り上げて招集されたこの緊急会議には、外部からの協力として、隼人、児玉、山崎の三名の弁護士も参加していた。
会議室に現れた隼人たちに、紬はほんの少しだけ安堵の表情を見せる。
「状況は確認しています。ネット上での情報拡散、訴訟を前提とした扇動、クラウドファンディングを含む感情的訴求。すべて、意図的に設計されたものと考えて差し支えないでしょう」
一条の声が会議室に響く。
背後のモニターには、高森のSNS投稿と、それに連なる“被害者の会”のようなタグ付き拡散の画面キャプチャが表示されている。
児玉が口を開く。
「この手の“集団化の動き”に対して、焦って動くと逆効果になります。まずは事実を整理し、法的に問題のある部分に的確に手を打つことが重要です」
「拡散の主要アカウントや関連人物の洗い出し、完了しています。プロバイダへの情報開示請求は順次進めます」と山崎。
情報収集チームのリーダーとすでに連携しているようだった。
法務部長が頷く。
「名誉毀損および業務妨害の立証可能性については、児玉先生から助言をもらって進めてください」
片山が腕を組んだまま言う。
「事故対応部門は過去のやりとりを全件確認する。口頭・書面問わず、時系列で整理して文書化する。…成瀬、お前がまとめろ」
「はい」と紬は短く返し、資料に視線を落とす。
隼人の姿をちらりと横目に感じながら、深く息を吸った。
「広報は?」と経営陣の一人が促す。
「はい、外部向け声明について、法務の監修のもと草案を用意しています。
“当社は一連の対応について法に則って対応していること”、“個人のプライバシーに最大限の配慮をしており、現時点では公表できないことがあること”、“誹謗中傷や虚偽情報には法的対応を検討すること”の三本柱で準備します」
「SNSに公式アカウントで反応するかどうかは、慎重に検討しましょう」と一条が静かに言う。
「こちらが過剰反応しているように見えると、高森側の思う壺です」
「……情報収集チームは?」と片山。
「高森の過去の発信履歴、過去に起こしたトラブル、炎上歴、ネット上の書き込みに見られる傾向などを解析中です。匿名掲示板の書き込みには、高森本人と見られるものも混じっている可能性があります」
会議室には一瞬の静寂が落ちた。
「――動きましょう」
経営陣の一人が静かに言った。
「このままでは、嘘が真実のように広まっていく。事実に基づいた、正当で誠実な対応が我々にはある」
一条がうなずき、静かに立ち上がる。
「私たちは、感情で戦うのではなく、法と事実で戦います」
会議は、まるで歯車が噛み合ったように、それぞれの役割が一気に明確になり、動き出した。
紬も席を立ち、書類を抱えて出口へと向かう。
ふと横を歩く隼人が、ポツリとつぶやく。
「ここからだよ。正念場は」
紬はその言葉に頷き、小さく拳を握った。