【番外編】孤高の弁護士と誓いの光 — 未来へ紡ぐ約束
隼人の指先が耳のふちを優しくなぞるたびに、紬の呼吸が少しずつ深くなっていく。
緊張がほどけていく音が、静かな部屋に満ちていた。

「ん……」
かすかな声が紬の喉から漏れる。
瞼は閉じたまま、でも、口元がかすかにゆるんでいく。

「……なんかね、子どもの頃に戻ったみたい……」
ふっとした吐息とともに、紬が言う。

「ぎゅってされて……安心して……眠くなるの……」

それは夢と現の狭間で紡がれる、素直な本音。
頬を隼人の胸にすり寄せるようにして、紬はとろんとした声で続けた。

「……もっと早く、こうしてもらえばよかったな……
 ……がんばりすぎちゃった……かも……」

その言葉に、隼人の胸がきゅっと締めつけられる。
ずっと見守ってきたその背中が、ようやく少しだけ、自分に預けられた気がした。

「紬」
小さく名前を呼ぶと、紬は目を閉じたまま、うん……と返す。

「そばにいるから。これからも、ずっと」

紬はふわりと微笑みながら、隼人の胸元に手を伸ばし、ぎゅっとつかむ。
「……じゃあ、ずっとこうしてて……ね……」

それきり、彼女の呼吸はすぅ、すぅ、と静かな眠りのリズムに変わっていった。

隼人はその小さな寝息を聞きながら、そっとブランケットを肩までかけ直し、額にひとつキスを落とした。

「おやすみ、紬。よくがんばったね」

今夜だけは、何も背負わせない。
彼女のための、完全なやすらぎの時間だった。
< 39 / 96 >

この作品をシェア

pagetop