【番外編】孤高の弁護士と誓いの光 — 未来へ紡ぐ約束
午後三時を回った頃だった。
会議室の空気は、いつにも増して張りつめていた。
広報、法務、経営企画、それに事故対応部門が集まり、進行中の高森案件についての進捗共有が続いていた。
紬は、その中心にいた。
ホワイトボードに並んだタスク一覧。
社内対応と法的処理、それに各所への報告スケジュール――どれひとつ、彼女の手から離れていない。
「これは私が」
「ここは一度、確認します」
「後ほど改めてご説明を」
淡々と話す声は落ち着いているようで、けれど自分でもわかっていた。
呼吸が浅い。
心拍がやけに速い。
手のひらにはじんわりと汗が滲んでいる。
「紬、大丈夫?」
ふいに、斜め向かいに座っていた茜が声をかけてきた。
「……え?」
気づくと、ボールペンを持ったまま手が止まっていた。
視界がほんの少し、歪んでいる。
ホワイトボードの文字が、滲んで読めない。
「ごめん、少し外の空気を吸ってくるね」
そう言って立ち上がった瞬間、頭がぐらりと傾いた。
一歩踏み出そうとした足がもつれる。
壁に手をつきながら、なんとか姿勢を保った。
誰かが、慌てて椅子を引いた音がした。
「大丈夫です、本当に。ちょっと、疲れてるだけですから」
そう言いながらも、口の中の渇きと、吐き気に似た胸のむかつきが収まらない。
昼食は、まともに取っていなかった。
というより、ここ数日、ロクに食べていない。
――おかしい。身体が動かない。
けれど、それでも。
「……もう少しだけ。あと、もう少しだけ、やらないと」
呟くように口にして、深く息を吐くと、紬はゆっくりと会議室を出ていった。
誰にも、崩れる姿を見せたくなかった。
そうやって、またひとつ、限界を踏み越えた。
会議室の空気は、いつにも増して張りつめていた。
広報、法務、経営企画、それに事故対応部門が集まり、進行中の高森案件についての進捗共有が続いていた。
紬は、その中心にいた。
ホワイトボードに並んだタスク一覧。
社内対応と法的処理、それに各所への報告スケジュール――どれひとつ、彼女の手から離れていない。
「これは私が」
「ここは一度、確認します」
「後ほど改めてご説明を」
淡々と話す声は落ち着いているようで、けれど自分でもわかっていた。
呼吸が浅い。
心拍がやけに速い。
手のひらにはじんわりと汗が滲んでいる。
「紬、大丈夫?」
ふいに、斜め向かいに座っていた茜が声をかけてきた。
「……え?」
気づくと、ボールペンを持ったまま手が止まっていた。
視界がほんの少し、歪んでいる。
ホワイトボードの文字が、滲んで読めない。
「ごめん、少し外の空気を吸ってくるね」
そう言って立ち上がった瞬間、頭がぐらりと傾いた。
一歩踏み出そうとした足がもつれる。
壁に手をつきながら、なんとか姿勢を保った。
誰かが、慌てて椅子を引いた音がした。
「大丈夫です、本当に。ちょっと、疲れてるだけですから」
そう言いながらも、口の中の渇きと、吐き気に似た胸のむかつきが収まらない。
昼食は、まともに取っていなかった。
というより、ここ数日、ロクに食べていない。
――おかしい。身体が動かない。
けれど、それでも。
「……もう少しだけ。あと、もう少しだけ、やらないと」
呟くように口にして、深く息を吐くと、紬はゆっくりと会議室を出ていった。
誰にも、崩れる姿を見せたくなかった。
そうやって、またひとつ、限界を踏み越えた。