【番外編】孤高の弁護士と誓いの光 — 未来へ紡ぐ約束
紬の額や首筋は、熱のせいでびっしょりと汗をかいていた。
服も肌に貼りつき、見ているだけで息苦しくなるほどだった。

「……ちょっと、着替えようか」

隼人は、タンスから柔らかいコットンのパジャマを取り出すと、ゆっくりと紬の身体を起こした。
目を閉じたままの彼女は、自分ではほとんど動けず、隼人にされるがままになっている。

汗で湿った生地を慎重に脱がせると、火照った肌があらわになる。

タオルで優しく拭き取りながら、隼人は息を殺して、彼女の呼吸に耳を澄ませた。
浅く、弱い――それでも、生きようとしている。

「……頑張ってるな、紬」

着替えを済ませたあと、首元に張りついた髪を緩くまとめ直す。
前髪が顔にかからないようにそっと留めると、ほんの少しだけ、彼女の表情が緩んだ気がした。

準備を終えると、隼人は迷わず彼女を抱き上げた。
華奢な身体が異様に熱く、腕に伝わるその温度に思わず強く抱きしめそうになる。

――車に乗せ、深夜の道を走る。
人気のない道路に、赤信号が虚しく点滅していた。

救急外来の明かりが見えたとき、隼人は無言でアクセルを緩め、病院の敷地に車を滑り込ませた。

受付で事情を説明すると、すぐに診察室に案内される。

カーテンの奥、簡素な診察ベッドの上に紬を寝かせると、白衣の医師がカルテを確認しながらやってきた。

「高熱と咳、脱水の症状もありますね。意識は……大丈夫そうですね。今、点滴を打ちます」

看護師が素早く準備を進め、針が紬の腕に刺される。
その瞬間、わずかに顔をしかめた紬に、隼人は思わず手を握った。

「おそらくウイルス性の急性気管支炎と、高熱による脱水が重なった状態でしょう。
肺炎にはなっていないようですが、もう少し遅ければ危険でした。今夜は点滴を受けて、ご自宅での安静を。念のため、内服薬も処方します」

「……ありがとうございます」

隼人は深く頭を下げた。

ようやく、紬の呼吸が少しだけ安定し始めた。

彼女の手は、まだ熱い。

それでも――
今は確かに、助けられたのだという安堵が、隼人の胸にじわりと広がっていた。
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