【番外編】孤高の弁護士と誓いの光 — 未来へ紡ぐ約束
寝室のドアを静かに閉めると、隼人はリビングの窓辺まで足を運び、スマートフォンを耳に当てた。
まだ朝の光が優しく室内を照らしていて、カーテンの隙間から差す陽が、淡く床を照らしている。
数コールの後、電話の向こうから張りのある声が返ってきた。
「片山です。……成瀬、どうした?」
開口一番、心配そうな声音。
「おはようございます。月島法律事務所の一条です」
隼人が落ち着いた声で名乗ると、電話の向こうで一瞬の間が空いた。
「……え、一条先生? まさか……先生から連絡が来るなんて、びっくりです。成瀬さんに何か?」
片山は、紬と隼人が同棲していることを知っているが、それでも職場を通してではなく、隼人本人から直接電話が来たことには驚いたようだった。
「すみません、朝早くから。……実は、昨夜、成瀬が高熱で倒れて。救急にかかって、今は少し落ち着いていますが……。今日は会社を休ませていただくと、彼女に代わって連絡しました」
「……そうでしたか」
隼人は、少し声を落として続けた。
「本人は、まだ休めないと、強く思っているようですが……これ以上無理させると、本当に危ない気がします。復帰してからも、しばらくは様子を見てやってほしいんです」
隼人の声音には、彼女を想う真摯な気持ちが滲んでいた。
電話越しに、片山が深く息を吐くのが聞こえた。
「……もちろんです。こちらこそ、しばらく無理をさせてしまったこと、反省しています。高森の件も、法務と広報が中心になって、ようやく全体像が見えはじめてきました。これからは、彼女がひとりで背負いこまなくてもいいよう、体制を整えるつもりです」
「ありがとうございます」
隼人は、短く礼を言った。
そのあと片山は、少し柔らかい声で言葉を足した。
「……成瀬さんは、大事にされてるんですね。安心しましたよ。一条先生、どうか彼女のそばにいてあげてください」
「ええ、もちろんです」
そうして電話は静かに切れた。
隼人はスマートフォンをそっとテーブルに置き、窓の外の空をひとつ仰いだ。
まだ朝の始まりを告げる空気の中で、紬が穏やかに回復してくれることを、心から願いながら。
まだ朝の光が優しく室内を照らしていて、カーテンの隙間から差す陽が、淡く床を照らしている。
数コールの後、電話の向こうから張りのある声が返ってきた。
「片山です。……成瀬、どうした?」
開口一番、心配そうな声音。
「おはようございます。月島法律事務所の一条です」
隼人が落ち着いた声で名乗ると、電話の向こうで一瞬の間が空いた。
「……え、一条先生? まさか……先生から連絡が来るなんて、びっくりです。成瀬さんに何か?」
片山は、紬と隼人が同棲していることを知っているが、それでも職場を通してではなく、隼人本人から直接電話が来たことには驚いたようだった。
「すみません、朝早くから。……実は、昨夜、成瀬が高熱で倒れて。救急にかかって、今は少し落ち着いていますが……。今日は会社を休ませていただくと、彼女に代わって連絡しました」
「……そうでしたか」
隼人は、少し声を落として続けた。
「本人は、まだ休めないと、強く思っているようですが……これ以上無理させると、本当に危ない気がします。復帰してからも、しばらくは様子を見てやってほしいんです」
隼人の声音には、彼女を想う真摯な気持ちが滲んでいた。
電話越しに、片山が深く息を吐くのが聞こえた。
「……もちろんです。こちらこそ、しばらく無理をさせてしまったこと、反省しています。高森の件も、法務と広報が中心になって、ようやく全体像が見えはじめてきました。これからは、彼女がひとりで背負いこまなくてもいいよう、体制を整えるつもりです」
「ありがとうございます」
隼人は、短く礼を言った。
そのあと片山は、少し柔らかい声で言葉を足した。
「……成瀬さんは、大事にされてるんですね。安心しましたよ。一条先生、どうか彼女のそばにいてあげてください」
「ええ、もちろんです」
そうして電話は静かに切れた。
隼人はスマートフォンをそっとテーブルに置き、窓の外の空をひとつ仰いだ。
まだ朝の始まりを告げる空気の中で、紬が穏やかに回復してくれることを、心から願いながら。