【番外編】孤高の弁護士と誓いの光 — 未来へ紡ぐ約束
電話を終えた隼人は、リビングの空気をゆっくりと吸い込み、スマートフォンを手に寝室へと戻っていった。
ドアノブにそっと手をかけ、なるべく音を立てないようにドアを開ける。

寝室には、まだ柔らかな朝の光がカーテン越しに差し込んでいて、紬はその中でベッドに身を預けたまま、もそもそと動いていた。

髪は軽くまとめられ、頬には熱の名残が残るものの、ほんの少し呼吸が落ち着いた様子に、隼人は安堵の息をひとつつく。

「……ただいま」

ふっと微笑んで、ベッドの脇に腰を下ろしながら、何気なく言ったその言葉に、紬はゆっくりとまぶたを開けた。

「……うん、おかえり」

声はまだかすれている。
けれど、どこか安心した響きがあった。

隼人は冷たい水を入れたグラスを手にして、紬のそばに差し出した。

「ちょっとだけ、水。飲めそう?」

紬は頷いて、上体を少し起こすと、隼人の手を借りながら水を口にした。
冷たい感触が喉を通り過ぎると、すこしだけ体が楽になった気がした。

「……会社、連絡してくれたの?」

「うん。片山さん、すごく心配してた。無理させてたって……ちゃんと反省してたよ」

「……そっか」

紬はふわりと笑った。ほっとしたような、でもどこか申し訳なさそうな笑みだった。

隼人はその表情を見つめながら、ふと、頭を優しく撫でた。

「心配しなくていいよ。今日はゆっくり、ちゃんと休む日」

紬はその言葉に、小さく頷いた。

そのまま、隼人の腕の中に自分から体を預けると、ゆっくりと目を閉じた。
安心したのか、表情にはほんのりと、眠りの気配が差していた。

隼人は、そっとブランケットを肩までかけ直すと、もう一度紬の髪を撫でながら、低く、穏やかに囁いた。

「……おやすみ、紬」

その声に、紬はかすかに笑ったように見えた。
ようやく、深く眠れる朝が訪れようとしていた。
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