【番外編】孤高の弁護士と誓いの光 — 未来へ紡ぐ約束
「いい子だね、紬」

隼人の低く甘やかな声が、静かにベッドルームに響いた。
その響きだけで、紬の胸が熱くなっていく。

彼の膝の上で軽くキスを終えた直後、隼人はすっと目を開けて、体を起こす。

「……よくできました」

そう言いながら、紬の頬に手を添える。
そして――もう一度、ゆっくりと引き寄せた。

「今度は、“教えながら”やってみようか」

「……教えながら?」

「うん。口、ちょっと開けて」

紬の顔が一気に赤く染まる。けれど、拒むことはできなかった。
彼の視線があまりに真剣で、優しくて、逃げる理由を見失ってしまう。

そっと唇を開くと、隼人の舌がわずかに紬の中へ触れてくる。

「……っ」

初めての感覚に、体がピクリと震える。
けれど、背中に添えられた手がそっと撫でて、安心させるように支えてくれた。

「怖くないよ。……ね?」

唇が、舌が、少しずつ絡み合う。
浅く、深く、探るように。

やがて紬の舌が、恐る恐る隼人の動きに応える。
それを確認すると、隼人はくすっと小さく笑った。

「上手。……すごく、いい」

褒められるたびに、心も体も熱くなっていく。
唇が離れるたび、そこにはわずかに濡れた名残が残っていて、それすらもくすぐったい。

「ねえ、紬」

「……なに」

「俺にキスして。……さっきみたいに、もう一回」

紬は頷くと、ゆっくりと体を寄せた。

今度は、もっと自然に。
もっと、深く。
そして、確かめるように――彼の唇を求めた。

舌先が触れた瞬間、隼人が小さく息を吸う。

「……そう、そう、それでいい」

それだけで、また褒めてくれる。

「もう、……変な気分になってきた」

「俺は最初からだよ?」

耳元で囁かれ、ぞくっと背筋を走る甘い電流。

その瞬間、隼人の手が紬の背中を撫で上げる。
指先が肩甲骨のあたりまで届き、服越しに優しく、でも確実に“感じる場所”を探るように――。

「……紬。触れても、いい?」

問いかける声は、すでに熱を帯びていた。
その瞳の奥には、もう抑えようのない何かが灯っている。

紬は、視線を逸らしながら、小さく頷く。

その仕草すら、隼人はたまらなく愛おしそうに見つめた。
< 60 / 96 >

この作品をシェア

pagetop