【番外編】孤高の弁護士と誓いの光 — 未来へ紡ぐ約束
その朝、紬はまた定時ぎりぎりにオフィスへ飛び込み、自席に着くと、スーツの袖口を直しながらホッとひと息ついた。

「ふぅ……間に合った……」

髪を耳にかけたその瞬間だった。
向かいのデスクでPCを立ち上げていたあかりが、ふと視線を落としたその先で――。

「……えっ!? つむぎ!!」
オフィスの真ん中で、爆音レベルの声が響いた。

周囲がざわつく。
「何?」「どうしたの?」と声が上がり、振り返った紬は、ぎくっと肩を跳ねさせる。

「ちょっとあかり、声でか……っ」
「待って、ちょっと見せて! ねえ、見せてってば!」

あかりはデスク越しに身を乗り出し、紬の左手を掴んで持ち上げた。
その薬指には、あのダイヤモンドの指輪が光っている。

「……ああああああああああああああ!!!!!」
第二波の大音量がオフィスに鳴り響く。

「紬、あんた、ついにやったのね!?」
後ろから駆け寄ってきた茜が、思わず隣にいた佐藤くんの肩をバシバシ叩いた。

「いってっ……って、え? なになに? マジっすか!?」
「佐藤くん、あんた見なさいよこれ!! この指輪!!」

いつの間にか周囲には同僚たちが集まり、話題は一瞬で「成瀬さん、婚約!?」モードに突入。

紬は顔を真っ赤にして、もはや逃げ場もなく、デスクに埋まりそうになっていた。

「ちょ、あの……そんな大げさな話じゃ……!」
「大げさでしょ!? いや、十分でしょ!? あの一条先生でしょ!?」

「ていうか、これ完全に“本物”ってやつだよね? セレクトもサイズも完璧じゃん……!」と、目を光らせるのは総務の吉川さん。

その横で、あかりは胸の前で手を組んで言った。

「ああ……私、先越されたぁ……悔しい、でも、すごく嬉しい……! 紬……おめでとう……」

「ほんとだよ、紬。なんかもう、こっちまで幸せな気持ちになる……」
茜は満面の笑顔でそう言うと、紬の肩をぽんぽん叩く。

「さすがに隠しきれなかったな……」
紬は真っ赤な顔でそうぼやきながらも、左手の指輪をそっと見下ろした。

それは間違いなく、隼人からのまっすぐな愛の証。
そして、その光に気づいた人たちの声も、確かに彼女の新しい日常を祝福していた。
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