【番外編】孤高の弁護士と誓いの光 — 未来へ紡ぐ約束
テーブルの上には、湯気の立つ急須と、淡い色の湯のみが四つ。
秋を少し先取りした和菓子が、小皿に静かに添えられている。
私の実家の居間は、昔から変わらない。
季節の花が飾られた床の間、年季の入ったソファ。
そして今、そのソファに向き合って、私たち四人が静かに座っていた。
父・成瀬圭吾(けいご)と、母・成瀬友美(ともみ)。
そして、隣には、深く息を吸った隼人がいる。
緊張感はあった。でも、不思議と怖くはなかった。
隼人が、ゆっくりと口を開く。
「本日はお時間をいただき、ありがとうございます」
穏やかで低い声。まっすぐな姿勢。
いつもと同じ隼人だけれど、その眼差しに込められた決意を、私は知っている。
「このたび、紬さんと結婚することになりました。突然のご報告となりますが……きちんとご挨拶をしたく、本日伺いました」
父と母が、うなずく。
「彼女とは、もともと仕事を通じて知り合いました。最初は法務上のアドバイスという立場でしたが、彼女のひたむきな姿勢と、責任感の強さに心を惹かれていきました」
少し、私の方に視線を送ってくれる。
その眼差しの温かさに、私はそっと笑みを返す。
「さまざまな問題に直面する中で、一緒に悩み、答えを探し、時にはぶつかりもしましたが……そのすべてが、私にとってかけがえのない経験であり、紬さんの存在が、今の私を支えています」
私の両親は、何も言わず、ただ静かに耳を傾けていた。
その沈黙が、私には、まるで裁判のように感じられた。
でも、不思議と居心地が悪くはない。
隼人がこうして言葉を選び、誠実に向き合ってくれていることが、私には何より嬉しかった。
「私は……」
私も少しだけ声を重ねる。
「隼人さんと出会って、ただの恋愛ではなくて、ちゃんと“人生”のことを考えるようになりました。自分ひとりじゃなく、ふたりで乗り越えていくって、こういうことなんだって……教えてもらいました」
父が、ようやく口を開く。
「……真面目な人なんだな、君は」
母もふっと笑って、「裁判の開廷みたいだったわ」と肩をすくめる。
「でもね、それがあなたたちらしい気がしたの。お互いを尊敬していて、言葉に真心がある。……それだけで十分よ」
「紬が選んだ人なら、信じるよ」と、父。
私は胸の奥がじんと熱くなって、小さく頭を下げた。
「それと……紬から聞いている。ご家族のこと」
母がやさしいまなざしで隼人を見つめる。
「私たちは気にしてないわ。あなたがどう生きてきたか、どう紬と向き合ってきたか、今日だけでちゃんと伝わったから」
隼人が深く、丁寧に頭を下げる。
「ありがとうございます。……私なりに、彼女を大切に、守っていきたいと思っています」
「守られるだけじゃなくてね」
母が茶目っ気たっぷりに私の方を見てくる。
「紬もちゃんと支えてあげるのよ。しっかりしてるようで、隼人さん、ちょっと無理しちゃうタイプみたいだから」
「……うん、わかってる」
家族がいてくれるって、こういうことなんだ。
温かくて、ちょっと恥ずかしくて、でも何より心強い。
私はこの日を、たぶんずっと忘れない。
秋を少し先取りした和菓子が、小皿に静かに添えられている。
私の実家の居間は、昔から変わらない。
季節の花が飾られた床の間、年季の入ったソファ。
そして今、そのソファに向き合って、私たち四人が静かに座っていた。
父・成瀬圭吾(けいご)と、母・成瀬友美(ともみ)。
そして、隣には、深く息を吸った隼人がいる。
緊張感はあった。でも、不思議と怖くはなかった。
隼人が、ゆっくりと口を開く。
「本日はお時間をいただき、ありがとうございます」
穏やかで低い声。まっすぐな姿勢。
いつもと同じ隼人だけれど、その眼差しに込められた決意を、私は知っている。
「このたび、紬さんと結婚することになりました。突然のご報告となりますが……きちんとご挨拶をしたく、本日伺いました」
父と母が、うなずく。
「彼女とは、もともと仕事を通じて知り合いました。最初は法務上のアドバイスという立場でしたが、彼女のひたむきな姿勢と、責任感の強さに心を惹かれていきました」
少し、私の方に視線を送ってくれる。
その眼差しの温かさに、私はそっと笑みを返す。
「さまざまな問題に直面する中で、一緒に悩み、答えを探し、時にはぶつかりもしましたが……そのすべてが、私にとってかけがえのない経験であり、紬さんの存在が、今の私を支えています」
私の両親は、何も言わず、ただ静かに耳を傾けていた。
その沈黙が、私には、まるで裁判のように感じられた。
でも、不思議と居心地が悪くはない。
隼人がこうして言葉を選び、誠実に向き合ってくれていることが、私には何より嬉しかった。
「私は……」
私も少しだけ声を重ねる。
「隼人さんと出会って、ただの恋愛ではなくて、ちゃんと“人生”のことを考えるようになりました。自分ひとりじゃなく、ふたりで乗り越えていくって、こういうことなんだって……教えてもらいました」
父が、ようやく口を開く。
「……真面目な人なんだな、君は」
母もふっと笑って、「裁判の開廷みたいだったわ」と肩をすくめる。
「でもね、それがあなたたちらしい気がしたの。お互いを尊敬していて、言葉に真心がある。……それだけで十分よ」
「紬が選んだ人なら、信じるよ」と、父。
私は胸の奥がじんと熱くなって、小さく頭を下げた。
「それと……紬から聞いている。ご家族のこと」
母がやさしいまなざしで隼人を見つめる。
「私たちは気にしてないわ。あなたがどう生きてきたか、どう紬と向き合ってきたか、今日だけでちゃんと伝わったから」
隼人が深く、丁寧に頭を下げる。
「ありがとうございます。……私なりに、彼女を大切に、守っていきたいと思っています」
「守られるだけじゃなくてね」
母が茶目っ気たっぷりに私の方を見てくる。
「紬もちゃんと支えてあげるのよ。しっかりしてるようで、隼人さん、ちょっと無理しちゃうタイプみたいだから」
「……うん、わかってる」
家族がいてくれるって、こういうことなんだ。
温かくて、ちょっと恥ずかしくて、でも何より心強い。
私はこの日を、たぶんずっと忘れない。