【番外編】孤高の弁護士と誓いの光 — 未来へ紡ぐ約束
エレベーターの扉が静かに閉まると、佐藤悠太は落ち着かない様子でネクタイをいじりながら、小さく息を吐いた。

「……やっぱり、緊張しますね。顧問弁護士さんに会うのって、初めてですし」

「ふふ、そうだよね」
紬は隣で微笑みながら、優しく声をかけた。

「でも大丈夫。私がついてるから、安心して。今回は補償の方針説明がメインだから、佐藤くんはまだ聞き役でいいの。質問されたら、無理せず、わかる範囲で答えれば大丈夫よ」

「……はい、成瀬さんがそう言ってくれると、少し安心します」

彼は緊張で強張っていた口元を少し緩め、目を細めた。
まるで安心を得た子犬のように、ぴたりと紬の隣に寄り添う。

(本当にわかりやすい子)

そんな風に思いながらも、紬はその素直さがどこか微笑ましく、肩を軽く叩いて励ます。

エレベーターが停止し、扉が開く。
月島総合法律事務所の受付が目の前に広がると、佐藤は少し姿勢を正し、表情を引き締めた。

「行こうか。挨拶は笑顔で、ね?」

「……はい!」

紬の声に背中を押されるように、佐藤はうなずいて前を向く。

廊下を歩いていると、ちょうど反対側から児玉と、新人弁護士の山崎が歩いてくるところだった。

「あれ、成瀬さん。お疲れさまです」

「こんにちは。あっ、今日は外回り?」

児玉が軽く手を上げて挨拶し、山崎も笑顔を向けた。

「はい、保険対応中の案件で、補償方針の確認です。こちら、新人の佐藤くん。今月から私のチームに加わったんです」

「佐藤悠太です。よろしくお願いしますっ」

佐藤が少しだけ声を張って頭を下げると、児玉と山崎は「おお、元気がいいね」と口を揃えて頷いた。

「成瀬さんが教育係なら、安心だね」と児玉が笑いながら言う。

その横で山崎が、紬と佐藤の距離感にどこかほんわかした視線を向けながらつぶやいた。

「……なんか、姉弟みたいですね。癒されます」

「えっ……あっ、そうですか?」
佐藤が少し照れくさそうに頬を赤くする。

「ふふ、そうかもね」
紬は変わらず優しく微笑みながら、そのまま事務所の奥へと進んでいった。

児玉と山崎はその背中を目で追いながら、なんとなく顔を見合わせた。

「一条がこれ見たら、また不機嫌になるな」

「……ですね」

思わず笑ってしまいそうな会話を交わしながら、二人も自分たちの仕事へと戻っていった。
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