幼馴染は私を囲いたい!【菱水シリーズ②】
春のイチゴフェアを狙っていたのになー。
がっかりしながら、ロビーをとぼとぼと歩いていると私を呼ぶ声がした。

「奏花さんっ、こっちにっ」

こそこそとマネージャーの宰田(さいだ)さんが柱の影から手招きをしていた。
でも、柱がそんな太いわけじゃないからしっかり体は見えている。
ただの怪しい人だ。
なにしてるの、あの人……
そばに行くとホッしたように宰田さんが言った。

「楽屋に行きましょう。このまま、ここにいると深月(みづき)さんが奏花さんに寄ってきてしまうので急いでください」

「私をゴキブリホイホイみたいに言うのはやめてください」

「す、すみません。つい」

なに認めてるのよ。
今のは例えよ、例え。
『そんなつもりありません』っていうのを期待していたのに。
今日は私が滅多打ちにされる日なの?
迷惑になると困るのでおとなしく楽屋に案内された。
楽屋の中は花束と差し入れでいっぱいで甘い香りに包まれていた。
中に入ると陣川(じんかわ)さんと渋木(しぶき)さんが着替え終わって休んでいるところだった。

「あー、宰田。気が利くなー」

水を飲んでいた陣川さんがこっちを見て笑った。
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