幼馴染は私を囲いたい!【菱水シリーズ②】
「おい、弘部(ひろべ)ー!言うなよ」

営業チームの中で一番年下の弘部君がうまくフォローする。
誘われた覚えはないけど、まあ、いいやと思いながら席に着いた。

「渓内さんはいつも仕事が終わるとさっさと帰るから、てっきり決まった相手がいると思ってたなあ」

「そうそう。気づいたら『いない!?』ってなるんだよな」

それは遅くなる前に帰らないと逢生から電話がかかってくるから。
でないで放置しておくとうちの家族に電話するからね?
あんたは私のお父さんかってのよ!
とはいえ、逢生の生存確認のためでもあるからしかたない。
留学先でホームシックになった時、食事が食べられなくなったことがあり、留学先まで行くことになった。
私の有給休暇よ、さようならってなったからね。
逢生の両親は二人とも医者で息子は放置。
五体満足なら自分のことは自分でやれのスタイルを貫かれている。
なかなかサバイバルな親なのだ。

「忙しくて、すみません」

そんなこっちの事情は話せない。
また『奏花ちゃんの彼氏って―――以下同文』ってなるのは目に見えている。
一番無難な答えを返しておいた。
< 8 / 213 >

この作品をシェア

pagetop