幼馴染は私を囲いたい!【菱水シリーズ②】
「お、お母さん、モテるんですね」

「もう死んでいないけどね。生きていた頃は恋人がたくさんいたよ」

「ご、ごめんなさい」

「謝らなくても。奏花ちゃんが俺を救ってくれたのに」

私が梶井さんを救った?
驚き、梶井さんを見上げるとさっきまでの表情とは違う。
初めて会った時の梶井さんと同じ顔をしていた。
辛そうな顔―――

「奏花ちゃんと初めて出会った日、俺はあれを最後の演奏にしようと思って弾いていた。邪魔が入って、最後まで弾けなかったけどね」

梶井さんの孤独が伝わり、抱きしめられているというよりは安心させるためにそのままでいた。
この孤独を私は知っている。
逢生だ―――梶井さんは逢生に似ている。

「あの頃、俺のチェロをかっこいいと言ってくれたのは母親と奏花ちゃんだけだった。母親の喜ぶ姿を見ていたくて、チェロを弾いていたんだ」

あれはレクイエムだったんだ。
きっと梶井さんのお母さんが好きだった曲。
あの演奏にそんな意味があったとは知らなかった。

「奏花ちゃんが俺をチェリストにしたんだよ」

くしゃと髪を乱されて腕の中でもがいた。
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