寝不足でお見合いしたら、結婚が決まりました
「どうした?
 忘れ物か?」

「はい」

 いや、手土産以外で持ってきたのは、さっきから一度も開けていないこの小さなバッグ一個だけなので、なにも忘れようはないのだが……。

「じゃあ、今日は暑いから。
 クーラーかけとくよ、車」

 ほら、と家のカードキーを渡してくれた。

「それ、一枚お前にやるから」
「えっ」

 慶紀はこちらの返事を聞かずに、

 じゃあ、先に下りてる、
と行ってしまった。

 か……鍵をいただいてしまいましたよ。

 しかも、そんな現場を赤い車の人に見られてしまいましたよ。

 殺されるっ、と振り向いたとき、ダダダダダッと彼女がこちらに向かい、走ってきた。

 ひいっ、と綾都も走り出そうとする。
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