君が最愛になるまで
私の腕に触れる部分から要くんの熱が伝わってきて心臓がバクバクと暴れるのが分かる。
要くんが私を見つめる瞳が甘くて、むず痒く感じるし今まではこんな風に熱の篭った視線を向けられたことはなかった。
要くんからの好意になんとなく気づいているにも関わらず2人で出かけてしまっていいのだろうか。
そんなことを考えていることにきっと要くんは気づいているだろう。
だけど要くんの優しさや気持ちを無下にはできなかった。
柔らかい雰囲気をまといつつ私に優しげな視線を向ける要くんに小さく笑いかける。
「───おい」
突然耳に不機嫌そうな声が響く。
振り返るとそこにいたのは眉間に皺を寄せて私を冷たく見つめる千隼くんだった。
チラッと私の腕部分に視線を向けたかと思えば眉間に刻まれたそのシワがますます深まる。
明らかに不機嫌だということがひと目見るだけで伝わってきた。
「あの、なんですか?」
「なんですか、だと?仕事中に何してる?」
「呼び止めるために手を掴んだだけですよ」
「⋯⋯紬希に用がある。こっちに来い」
「⋯お子様ですね⋯⋯」
ポツリと要くんが呟いた言葉は千隼くんには届いていないようだったが、私の耳にはしっかり届く。
その言葉は間違いなく千隼くんに向けられたものだと分かるが、どこか挑戦的にも聞こえた。
要くんが向ける視線はどこか鋭く、敵意をむき出しにしているようにも感じる。
バチバチと火花が散っているようにも見えるくらい2人の空気が悪く重たい。
「来い紬希」
「え、ちょっ!」
フロアを出ていく私たちの姿を同僚たちが何事かと振り返りその度に視線が突き刺さる。
社内でもある意味有名な千隼くんが幼なじみの腕を掴んで歩いているのだからそのリアクションにもなるだろう。
私の腕を掴んだ千隼くんは足早にその場を去り、空いていた会議室に連れてこられた。
そのままガチャっと鍵を締められ私たちは2人密室に閉じ込められる。
「急にどうしたの?」
「隙ありすぎ」
「隙って⋯⋯」
「何であんなふうに距離詰められてるわけ?」
「⋯それは千隼くんに関係ないじゃん」
千隼くんが不機嫌になる理由が分からない。
私の腕を掴む力は強くなかなか離してもらえなかった。
私を見つめる表情はやっぱり険しくて、眉間のシワは深く刻まれたままだ。
掴まれた腕にギュッと力が込められ痛いとすら感じる。
(なんでそんな嫉妬みたいな表情するの⋯⋯)
「あいつ、紬希のこと好きなんだろ」
「⋯そんなことないよ。ただの同期だよ」
「好意抱いてる顔してる。それが分からないほど鈍感じゃないだろ?」
「そうだとしても、千隼くんには関係ないよね?」
本当はこんなこと言うつもりはなかった。
だけど千隼くんは自由に関係を持っていたというのに、私の交友関係に口出しされたくなかった。
私の言葉に千隼くんはやっぱり傷ついたように眉を一瞬ひそめる。
そんな顔をされると私が悪いことをしているように見えるが、至極真っ当なことを言っているつもりだ。
「千隼くんは《《ただの》》幼なじみでしょ?私の交友関係にまで口出しする権利はないと思う」
「⋯⋯そうだな。《《ただの》》幼なじみだな、俺たち」
「⋯⋯⋯」
「⋯⋯⋯」
なぜか黙り込んでしまった千隼くんは眉をひそめて唇を噛み締め、何か言葉を飲み込んでいた。
本当は千隼くんが好きなのに、私もムキになってしまったと思う。
だけど今更言葉を撤回することもできない。
ゆっくりと私の腕を掴んでいた力が弱まり、熱が離れていった。
「紬希」
「なに?」
要くんが私を見つめる瞳が甘くて、むず痒く感じるし今まではこんな風に熱の篭った視線を向けられたことはなかった。
要くんからの好意になんとなく気づいているにも関わらず2人で出かけてしまっていいのだろうか。
そんなことを考えていることにきっと要くんは気づいているだろう。
だけど要くんの優しさや気持ちを無下にはできなかった。
柔らかい雰囲気をまといつつ私に優しげな視線を向ける要くんに小さく笑いかける。
「───おい」
突然耳に不機嫌そうな声が響く。
振り返るとそこにいたのは眉間に皺を寄せて私を冷たく見つめる千隼くんだった。
チラッと私の腕部分に視線を向けたかと思えば眉間に刻まれたそのシワがますます深まる。
明らかに不機嫌だということがひと目見るだけで伝わってきた。
「あの、なんですか?」
「なんですか、だと?仕事中に何してる?」
「呼び止めるために手を掴んだだけですよ」
「⋯⋯紬希に用がある。こっちに来い」
「⋯お子様ですね⋯⋯」
ポツリと要くんが呟いた言葉は千隼くんには届いていないようだったが、私の耳にはしっかり届く。
その言葉は間違いなく千隼くんに向けられたものだと分かるが、どこか挑戦的にも聞こえた。
要くんが向ける視線はどこか鋭く、敵意をむき出しにしているようにも感じる。
バチバチと火花が散っているようにも見えるくらい2人の空気が悪く重たい。
「来い紬希」
「え、ちょっ!」
フロアを出ていく私たちの姿を同僚たちが何事かと振り返りその度に視線が突き刺さる。
社内でもある意味有名な千隼くんが幼なじみの腕を掴んで歩いているのだからそのリアクションにもなるだろう。
私の腕を掴んだ千隼くんは足早にその場を去り、空いていた会議室に連れてこられた。
そのままガチャっと鍵を締められ私たちは2人密室に閉じ込められる。
「急にどうしたの?」
「隙ありすぎ」
「隙って⋯⋯」
「何であんなふうに距離詰められてるわけ?」
「⋯それは千隼くんに関係ないじゃん」
千隼くんが不機嫌になる理由が分からない。
私の腕を掴む力は強くなかなか離してもらえなかった。
私を見つめる表情はやっぱり険しくて、眉間のシワは深く刻まれたままだ。
掴まれた腕にギュッと力が込められ痛いとすら感じる。
(なんでそんな嫉妬みたいな表情するの⋯⋯)
「あいつ、紬希のこと好きなんだろ」
「⋯そんなことないよ。ただの同期だよ」
「好意抱いてる顔してる。それが分からないほど鈍感じゃないだろ?」
「そうだとしても、千隼くんには関係ないよね?」
本当はこんなこと言うつもりはなかった。
だけど千隼くんは自由に関係を持っていたというのに、私の交友関係に口出しされたくなかった。
私の言葉に千隼くんはやっぱり傷ついたように眉を一瞬ひそめる。
そんな顔をされると私が悪いことをしているように見えるが、至極真っ当なことを言っているつもりだ。
「千隼くんは《《ただの》》幼なじみでしょ?私の交友関係にまで口出しする権利はないと思う」
「⋯⋯そうだな。《《ただの》》幼なじみだな、俺たち」
「⋯⋯⋯」
「⋯⋯⋯」
なぜか黙り込んでしまった千隼くんは眉をひそめて唇を噛み締め、何か言葉を飲み込んでいた。
本当は千隼くんが好きなのに、私もムキになってしまったと思う。
だけど今更言葉を撤回することもできない。
ゆっくりと私の腕を掴んでいた力が弱まり、熱が離れていった。
「紬希」
「なに?」