君が最愛になるまで
不思議と言い切った私の気持ちはとてもスッキリしていて後悔はなかった。
これでやっと前に進めそうだ。


「あースッキリした!こんなスッキリするなら最初から言っておけばよかったな」

「1人で話して1人でスッキリしてんの?」

「うん。スッキリした。だからたくさん飲もうと思う」

「ほんと紬希って真っ直ぐだよな」

「そう?あ、これ食べてもいい?」


テーブルに並べられた料理を取り皿に分けて次々と口に頬張る。
海鮮を売りにしているお店なだけあってどれも新鮮ですごく美味しい。


自然と口角は上がり幸せいっぱいになった。
美味しい食べ物を食べるとやっぱり笑顔になるし幸せになる。


「俺が何してたか知ってるだろ?」

「うん。知ってるよ」

「それ知ってても好きって言ってくれるんだ?」

「まぁ私が好きになったのは昔から知ってる千隼くんだからね。千隼くんのいいとこ、いっぱい知ってるし。こう見えても幼なじみなので」

「⋯⋯紬希ってなんでそうなんだろ」

「ん?どういうこと?貶されてる?」

「貶してない褒めてる」

「怪しい〜」


やっと本当に昔と同じようにただの幼なじみとして話せている気がする。
褒められているとは思えない言葉を聞かされたと思ったが、どうやら褒めてはくれているらしい。


疑わしさを込めて千隼くんを見つめるとクスッと微笑む千隼くんと目が合う。
柔らかい視線が私に向けられて少しだけこそばゆい。


「紬希はさなんで俺に聞いてこないの?」

「いや、聞こうと思ったよ。でも踏み込んでくるなって空気出したの千隼くんじゃん」

「あーまぁ確かに。その通りだな」

「だから別にいいかなって。聞かなくても困らないし」


テーブルに広がる料理を口に運ぶ千隼くん。
その何気ない動きでさえ綺麗でかっこいいと思わされる。


私はこの人の幼なじみでいることを選んだ。
彼氏とか彼女とかじゃなくて、ただ幼なじみとして近くにいることを。


「これからもこうしてご飯食べに行こうね。あ、でも彼女が出来たら教えて?私彼女を邪魔する幼なじみにはなりたくないから」

「なんだそれ」

「ほら、よく言うじゃん!幼なじみが彼女との間を邪魔してくる、みたいなお話!私そんな悪役はごめんだから」


千隼くんの幸せを願ってる。
それを叶えるのが私じゃなくてもいい。


誰でもいいから、千隼くんが幸せになってくれれば私は嬉しい。
それを1番近くで邪魔しない距離で見守っていければいいと、それが私が選んだ道だと言い聞かせた───。


***


あれからまた2週間程が経ち月日は流れ11月中旬となった。
私と千隼くんは変わらずたまにご飯を行く関係を続けている。


気持ちを伝えた後も千隼くんは変わらない。
答えを求めていた訳でもないため何も返ってこなくてもいいと思っている。


おかげで私は気持ちを吹っ切れて前に進めているし、いいこと尽くしだ。
だけど変わったこともある。


最初の2週を最後に毎週金曜日、千隼くんが女性社員と出かけることがめっきりなくなった。
それは会社内でも広がっており、女性社員たちは嘆いている。


どんな心境の変化があったのかは分からないが、もしかしたら千隼くんも前を向こうと思ってくれたのかもしれない。
その代わりと言っては変だが、千隼くんからの連絡頻度が上がった気がする。


「はぁ〜」

「ちょ、つむつむ?!今日何度目のため息かな?!」

「あ、ごめん!私そんなため息してた?」

「もうこの30分くらいの間で10回以上ため息吐いてるから!」


気づかないうちにため息を繰り返していたようで、真夏ちゃんの我慢の限界が来たようだ。
どうしたの、と困ったように笑う真夏ちゃん。


このため息の原因は分かっている。
犯人は幼なじみである千隼くんだ。
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