君が最愛になるまで
特別な感情 side千隼
2週間前に俺は幼なじみに告白された。
だけどあの子は付き合うことを望んでいるわけではないと、ただ前を向きたいから伝えたかったと、そう言って笑っていた。
そう笑った幼なじみを見て心臓がぎゅっと掴まれたように痛んだのを今でも覚えている。
告白してくれたというのに、俺の行いのせいで彼女は答えを求めようとしなかった。
それに対して罪悪感を感じてしまい、即座にその気持ちに対して言葉を返すことができなかった。
紬希に会ってから少しずつ自分の中で何かが変わっている気がした。
今までどうでもいいと思って好意を抱かせるような曖昧な関係を続けてその気にさせた女たちを煩わしく思うようになり、そういうことをして紬希に幻滅されたくない。
そう思うようになった俺は一切の誘いを断ち切り、胸を張って隣を歩けるように前を向き出した。
頭の片隅にいつもいるのは紬希だった。
再会してからというもの、なぜか俺の頭の中にはいつもあの子の顔があった。
紬希は幼なじみで確かに特別な存在だ。
だけどその特別という感情が少しずつ変化しているのを自分の中で感じていた。
俺の席からも見える場所に紬希のデスクはある。
パソコンのディスプレイを見つめて真剣な表情で仕事をしていることもあれば、難しそうに眉間に皺を寄せている時もある。
そんないろいろな表情をここから見るのがなんだかんだ楽しいと感じていた。
いつの間にか視線で彼女の姿を追っている自分がいる。
そんな思考を遮ったのは耳にこびりつくような甘ったるい女の声だった。
思考を乱され若干イラッとするものの上司として上手く隠して彼女に言葉を返す。
「ねぇ聞いてます〜?」
「あ、悪い。なんだっけ?」
「早乙女さん心ここに在らずって感じですよぉ」
仕事中だというのにこの女は俺に色目を使ってくる。
猫なで声のような甘ったるい声を響かせ、無駄なボディタッチを繰り返すこの仕草はとても慣れていていくつもの男を手玉にとってきたんだろう。
何度説明しても同じことを質問してくるため呆れていた所だった。
ため息をつきたくなるところを我慢し、彼女の質問に答えようと話を聞く。
「そんなふわふわしてて、もしかして欲求不満ですかぁ?」
「あ?」
「最近全然相手にしてくれないんですね。誰とも寝てないって聞きますよぉ」
いつの間にか俺の知らない場所で勝手に真実のように広がっていた俺が"誰でも抱く"という噂。
確かに遊んでいたのは事実だがそういう関係を持ったことはないし、心に違和感を最初に感じたあの日を最後に俺は全てのデートの誘いを断っていた。
確実に今までの俺とは違って、今までは他人にどう思われようが気にならなかったのに、なぜか紬希にとって誇れる自分でいたいと思うようになった。
だからこの女が俺を誘おうとしているのも不快でしかない。
「今夜、どうです?金曜日ですよぉ」
「もう辞めたんだわ。そういうの」
最低な事をしている自覚が芽生えてから、ひどく今までの行動を後悔するようになった。
もう過去は取り返せないため、これからの選択を間違わないようにするだけだ。
今日は紬希を誘ってご飯に行こうと思っていた。
そのため断るとあからさまに不機嫌そうに口を尖らせて俺を見つめる。
自分が可愛いと思ってやっているんだろうが、なんとも思えなかった。
再びチラッと紬希が座っている席に目を向けると、難しそうな顔をしながらパソコンのディスプレイを眺めていた。
(すげー顔してる⋯)
「ノリ悪いですねぇ」
「あのさ、毎回俺に聞きに来ないでまずは自分でやってみたらどうだ?それでも分からなかったら聞きにおいで。社会人ならそうすべきじゃない?」
「な⋯っ!」
「用が済んだら仕事戻って。みんな忙しいんだから」
「何それ⋯もういいです!」
ぷんすかしながら去っていくその背中を見つめながら冷たく言いすぎたな、なんて思ってもないことを考える。
もう1度チラッと紬希の方を見ると今度は後ろの席に座る同僚の1人と仲良さそうに話していた。
あんなふうに笑う紬希を俺は最近見ていない。
もちろん笑ってはくれるが、心を許したように満面の笑みを浮かべる姿は最近見ていない。
それなのにその男にはそんなふうに笑いかけるのか。
そう思うとなぜかモヤっとした。
だけどあの子は付き合うことを望んでいるわけではないと、ただ前を向きたいから伝えたかったと、そう言って笑っていた。
そう笑った幼なじみを見て心臓がぎゅっと掴まれたように痛んだのを今でも覚えている。
告白してくれたというのに、俺の行いのせいで彼女は答えを求めようとしなかった。
それに対して罪悪感を感じてしまい、即座にその気持ちに対して言葉を返すことができなかった。
紬希に会ってから少しずつ自分の中で何かが変わっている気がした。
今までどうでもいいと思って好意を抱かせるような曖昧な関係を続けてその気にさせた女たちを煩わしく思うようになり、そういうことをして紬希に幻滅されたくない。
そう思うようになった俺は一切の誘いを断ち切り、胸を張って隣を歩けるように前を向き出した。
頭の片隅にいつもいるのは紬希だった。
再会してからというもの、なぜか俺の頭の中にはいつもあの子の顔があった。
紬希は幼なじみで確かに特別な存在だ。
だけどその特別という感情が少しずつ変化しているのを自分の中で感じていた。
俺の席からも見える場所に紬希のデスクはある。
パソコンのディスプレイを見つめて真剣な表情で仕事をしていることもあれば、難しそうに眉間に皺を寄せている時もある。
そんないろいろな表情をここから見るのがなんだかんだ楽しいと感じていた。
いつの間にか視線で彼女の姿を追っている自分がいる。
そんな思考を遮ったのは耳にこびりつくような甘ったるい女の声だった。
思考を乱され若干イラッとするものの上司として上手く隠して彼女に言葉を返す。
「ねぇ聞いてます〜?」
「あ、悪い。なんだっけ?」
「早乙女さん心ここに在らずって感じですよぉ」
仕事中だというのにこの女は俺に色目を使ってくる。
猫なで声のような甘ったるい声を響かせ、無駄なボディタッチを繰り返すこの仕草はとても慣れていていくつもの男を手玉にとってきたんだろう。
何度説明しても同じことを質問してくるため呆れていた所だった。
ため息をつきたくなるところを我慢し、彼女の質問に答えようと話を聞く。
「そんなふわふわしてて、もしかして欲求不満ですかぁ?」
「あ?」
「最近全然相手にしてくれないんですね。誰とも寝てないって聞きますよぉ」
いつの間にか俺の知らない場所で勝手に真実のように広がっていた俺が"誰でも抱く"という噂。
確かに遊んでいたのは事実だがそういう関係を持ったことはないし、心に違和感を最初に感じたあの日を最後に俺は全てのデートの誘いを断っていた。
確実に今までの俺とは違って、今までは他人にどう思われようが気にならなかったのに、なぜか紬希にとって誇れる自分でいたいと思うようになった。
だからこの女が俺を誘おうとしているのも不快でしかない。
「今夜、どうです?金曜日ですよぉ」
「もう辞めたんだわ。そういうの」
最低な事をしている自覚が芽生えてから、ひどく今までの行動を後悔するようになった。
もう過去は取り返せないため、これからの選択を間違わないようにするだけだ。
今日は紬希を誘ってご飯に行こうと思っていた。
そのため断るとあからさまに不機嫌そうに口を尖らせて俺を見つめる。
自分が可愛いと思ってやっているんだろうが、なんとも思えなかった。
再びチラッと紬希が座っている席に目を向けると、難しそうな顔をしながらパソコンのディスプレイを眺めていた。
(すげー顔してる⋯)
「ノリ悪いですねぇ」
「あのさ、毎回俺に聞きに来ないでまずは自分でやってみたらどうだ?それでも分からなかったら聞きにおいで。社会人ならそうすべきじゃない?」
「な⋯っ!」
「用が済んだら仕事戻って。みんな忙しいんだから」
「何それ⋯もういいです!」
ぷんすかしながら去っていくその背中を見つめながら冷たく言いすぎたな、なんて思ってもないことを考える。
もう1度チラッと紬希の方を見ると今度は後ろの席に座る同僚の1人と仲良さそうに話していた。
あんなふうに笑う紬希を俺は最近見ていない。
もちろん笑ってはくれるが、心を許したように満面の笑みを浮かべる姿は最近見ていない。
それなのにその男にはそんなふうに笑いかけるのか。
そう思うとなぜかモヤっとした。