私のお世話がかり
 ◯大学 大教室 
 双葉「話……?」
 最上はうなづく。
 部長「なんだぁ? ナンパかぁ? 知り合ってすぐに家に誘うのはよくないぞ? 典型的な当て馬行動だからできるものもできなくなって……」
 部長がふざけて煽れば、最上は部長の顔をスケッチブックで塞いだ。
 最上「君の……」
 最上「その……君の……」
 最上は視線を逸らしながら、なぜか言いにくそうに口ごもっている。
 まるで告白のようなシチュエーションだが、告白されるような出来事ことは一切なく、双葉は首を傾げた。

 ややあって、最上は振り絞るように口を開いた。
 最上「君の、弟くんとお近づきにならせてください!」
 
 双葉・部長「弟〜?」
 二人は間の抜けたような声を上げた。
 だが、当の最上は赤くなりながらも姿勢を正し、とても真面目である。
 双葉 (私、弟のことなんか言ったっけ? )
 部長「最上くん、いくらオタ友に飢えてるからって……」
 部長は蔑んだ目で彼を見ている。
 双葉「オタ友……?」

 回想
 ◯居酒屋
 最上「最高だよな!」
 好きなものを語っているときの最上は、純粋な子どものような瞳であったことを思い出した。

 ◯大学
 双葉「ガチヒーローのことですか?」
 最上「そうそれ!」
 突然の弾んだ声に、双葉は目をパチクリさせた。
 最上「変身シーンとか、マジでかっこよくない!? 普通の人間だったのに変身すると能力が急上昇してそれに伴いそれぞれオーラに包まれ目の色も髪の色も変わり……あっ、ガチブラックの場合は普通の黒髪から漆黒の黒に染まっていく様も実に神秘的で……でねその覚醒した状態で包帯が解かれていくんだけど封印されし左腕の古傷がうごめいて失ったはずの前世の記憶がよみがえりそれで……」
 相槌する隙も与えずにひたすら語り続ける最上に、双葉は引きつった顔をした。
 双葉「へ、へぇー……」
 部長「……」
 部長「最上くん、ストップ。喋りすぎ。マシンガン過ぎて引いてるよ? 可愛い後輩ちゃんが」
 部長の声に反応し、双葉は瞬きをした。
 最上「……ご、ごめん……」
 真っ赤になった彼がちょっと可愛い。
 部長「最上くんはな、ガチヒーローの話題になるといつもこうなんだよ。これさえなければ、もっとモテただろうになー」
 最上は不服そうに唇を尖らせる。
 双葉 (そうなのかな) 
 双葉は改めて最上の身体を見つめた。シャツの袖ボタンもきちんと止め、少したるませてパンツにインしている。座っていても小顔で足が長いことが分かり、雑誌に載ってそうな外見だ。
 双葉(なるほど、外見もいいもんね)

 双葉と目が合うと、最上は困ったように愛想笑いした。
 最上「でもなぁ。ヒーローを嫌いになれっていうのは難しいし、モテなくてもいいかな」
 双葉「そのままでもかっこいいと思いますよ?」
 最上 「!?」
 双葉が呟くと、最上の顔はさっきよりもさらに赤くなった。
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