私のお世話がかり
 ◯大学 カフェテリア
 白い壁掛け時計がカチコチとリズムを刻み、双葉と最上が向かい合って座っている。
 最上は真面目な顔でガチブルーのポーズを取り、黒いジャケットの中には偶然スポーツブランドの青いTシャツを着ている。
 双葉は堪えきれず吹き出した。
 双葉「あっ……あははははは! もう、先輩はそれしかないんですかー?」
 ツボに入り、目尻に涙が浮かんだ。
 最上「それしかかって!」
 最上は黒いリュックの内ポケットを漁る。
 最上「これが最も大事だから! これに何度勇気をもらったか分かる? 分からないでしょう双葉さんは!!」
 最上はおもむろに子供用のキャラチョコレートを四本取り出した。なぜこんなものを常備しているのだろう。
 最上「選んで」
 双葉「えっ」
 最上「特別に君に分けてあげる」
 チョコレートをトランプのババ抜きの持ち方のように双葉に見せた。
 双葉「えっ、えーっと……」
 双葉 (べ、別にいらないんだけど。でも、最上先輩がくれるって言うんだから……)
 双葉は迷いながら手を伸ばし、
 双葉 (欲しいかも)
 レッドに触れた。
 最上「レッドかぁーー! 意外、レッドなんだ!!」
 最上は少し悔しそうに残念がった。
 双葉 (だって、ちょっと似てるんだもん)
 
 ◯思い浮かべる
 レッド「ウザいほど熱い!! ガチレッド!!!」
 うざ煽りポーズをする最上。

 双葉「ありがとうございます、先輩。先輩のおかげで元気出ました」
 双葉は最上を見て、浅くお辞儀した。
 最上「あ、うん。良かった」
 双葉「私も、少し頑張ってみます!」
 可愛らしくフニャッと笑った。

 最上には、彼女の姿が白い光に包まれたようにまぶしく見え、心臓がキュッとしめつけられた。
 最上「……ん?」
 ただ笑っただけなのに、心臓が勝手に早鐘を打つ。
 最上「なんだこれ……うそだろ……」
 胸に手を当てて冷静を保とうとしてみたが、しばらく治まることはなかった。

 ◯大学 キャンパス 夕方
 日が傾き、大学の高い建物の隙間から夕日が差し込み始めた。双葉は最上と別れ、校門を出て最寄り駅へ小走りする。

 双葉 (分かんないよね。もしかしたら私のこと、受け入れてくれるかも知れない)(だって、私が受け入れているんだから)

 ◯思い出す
 コスプレしている湯本、酔っ払ってる部長、熱弁している最上。
 彼らの姿が次々浮かんで、双葉はチョコレートを持った手をぎゅっと握る。


 ー時間経過ー
(一週間後)
 ◯小雨の降る日。大学には傘を差しながら歩く学生たちの姿。
 ◯大教室の一角には、ワイワイ話している学生たち。皆、派手な髪色、露出の多い服を着ている。
 双葉は彼らに話しかけた。
 双葉「あ……あの……っ」
 学生たち「?」
 双葉「まだ、グループ決まってなくて……混ぜてもらっていいですか……?」
 学生たちはシーンと静まり返る。
 双葉 (え? )
 予期せぬ反応に、双葉は真っ白になった。
 最上のアドバイスもあってか、声をかけたら必ず受け入れてもらえるという謎の自信があったのだ。
 学生たち「誰? この暗そうなの」「場違いでしょ」「友達だと思われたくないんだけど」
 双葉は何も考えることができずに、彼らの会話をただ追うのに精一杯だった。
 金髪学生「なんでオレたち?」
 双葉を見下すように、ふてぶてしくしくそう言った。
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