私のお世話がかり
 ◯回想 廊下
 エレベーター待ち中、ランプは一階で止まっている。

 双葉「人生の、おせわがかり? 何ですかそれ」
 最上「……」
 最上は目をつぶって考え込む。
 部長「変なこと考えてるんじゃねーよムッツリ」
 部長は彼の頭をはたいた。双葉には分からないが、アニメ関係で通じるネタがあったのだろう。
 最上「〜〜」
 最上は鼻の頭を抑えている。
 部長「簡単な話だ。小学生のころの少々手がかかる子供と、その面倒を押し付けてられてる子供のような関係ってことだ」
 双葉 (手がかかる……)
 双葉はズキッと胸が痛んだ。
 勉強はそこそこできたけど、それ以外は何もできない子供。それが自分だったからだ。
 本当のことなのに、指摘されると心にモヤがかかったようになる。
 そんな面倒なこと、引き受けなくていいですよ。
 と言おうとしたが、双葉の言葉を遮るように最上が口を開いた。
 最上「……俺はいいですけど」  
 双葉「え……」
 最上「双葉さんはうざったくないの? 俺男だし、一緒にいると付き合ってると思われるよ? 双葉さんに彼氏がいたら申し訳ないし、そうじゃないとしても新たな出会いの場を狭めるんじゃないか?」
 部長「いいじゃないか別に」
 最上「は?」
 なぜか部長が返事をして、最上の腕を引っ張った。

 ◯回想ーー部長と最上
 部長は最上の手を引き、二人で柱の陰に隠れた。
 エレベーターが音を鳴らして到着したが、見送る気である。

 部長(小声)「ネタに飢えてんだよ。知ってんだろ? このままじゃまた読み切り会議落ちる……助けてくれよ」
 部長は柱に手をつき、最上を問い詰めた(壁ドン)
 最上「知りませんよ」
 部長「あたしのウリはラブコメだ。男女カプ厨だ。それなのに……キャッキャピュアピュアカップルが描けないんだよ。彼氏はいるが……もはや旦那だ。編集にまた、リアルじゃないですねってぶった斬られたくねーよ! お願いだよあきよし(・・・・)!」
 部長が今にも泣きそうな声で訴えると、最上は残念そうな目で見下ろした。
 最上「はぁ……」

 ◯部長と最上……再びエレベーターが到着し、二人は柱の陰から出てくる

 双葉(何話してたんだろう……)
 気になるが聞けない双葉をよそに、最上はエレベーターに乗り込んだ。部長は階段で行くわ、とそそくさと降りていってしまった。
 エレベーターのドアが閉まり、双葉は最上と二人きりになる。シンとした密室の中、最上は静かに呟いた。
 最上「お世話、されたい?」 
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