私のお世話がかり
 ◯回想
 高校の廊下 夕方 
 双葉「先輩、来てくれたんですか!」
 眼鏡モブ先輩の姿を見て、双葉は手に楽譜のファイルを持ったまま、嬉しそうに駆け寄った。

 眼鏡モブ男子「……あはは! まっ、最後くらいはね!」
 双葉「最後……?」
 双葉が聞き返すと、モブ男子は逆光でにやりと笑う。後ろから、知らない派手な女子がひょっこり顔を出した。
 双葉「……あ、し、新入部員ですか? どうぞ……!」
 見知らぬ顔。双葉は音楽室へと誘導した。
 モブ男子「あほくさ」
 眼鏡モブ男子から聞いたことのないセリフが飛び出し、双葉は固まった。
 聞き間違いかと思ったが、派手女子がモブ男子に腕を絡ませた。
 モブ男子「他の部員を代表して君に会いに来てあげたんだよ。感謝しなよ」
 双葉「他の、部員……?」
 震える声で見上げる。
 モブ男子「ああ、あのメール読んだよ。残念だけど、この部活にはもう誰も来ないよ」
 モブ男子は冷たい目で双葉を見下ろした。
 いつの間にか、窓の外は真っ暗でザーザー降りになっていた。
 双葉「え……」
 派手女子「だってつまんなくなーい? こんなとこ」
 派手女子は身体をくねくね。
 双葉「つ、つまらなくなんか……!」
 双葉が声を大きくすると、派手女子は睨んだ。
 派手女子「じゃあ、あんたが面白くしてくれるの? 地味で暗くてノリの悪いあんたが、人が戻ってこれるような元気で明るい部活に戻せんのかよ!」
 近くへ、ピシャーンと雷が落ちた。稲光がカッと双葉たちを照らし、床に長い影ができる。

 双葉はファイルを落とし、楽譜がパラパラと散らばった。
 双葉(モノローグ)ーーもうだめだ。もう、この部活で誰かと音楽を奏でることなんかできない……
 双葉は泣くのを必死に堪えて、その場に立ち尽くした。
 ー回想終わりー

 ◯居酒屋
 双葉「私陰キャだから……陽キャのみんなと住んでる世界が違いすぎたんです。楽器は好きだったけど、こういうところにはいられないと思って……大学では、吹部より地味なサークルに入ろうと決めてました」
 双葉は手をもじもじさせ、最上は彼女をじっと見つめる。
 最上「……」
 双葉「私は漫画のことよく知らないけど、漫画研究部なら、私と気が合う人がいるかなって思ったんです。……でも、実際は違いました。私とは正反対の、明るくて楽しい人ばかりで……」
 そこまで言って、双葉はハッとして顔をあげた。
 双葉 (漫研のこと悪く言っちゃったかな)

 しかし、予想に反し最上は微笑んでいた。
 双葉(えっ? )
 ドキッ
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