スイートハニー
「リオが、浮気……」
「いやいやいや、まだ決まったわけじゃねえから!本人に直接確かめてみねえことにはさ」
「でも直接確かめて素直に答えてくれるもんなんですか、こういうのって」
「意外と素直な女はストレートに聞かれるとゲロッちまうもんだぜ?それに、もし相手の男がいるならお前とさっさと別れてそいつのとこ行きたいと思ってるかもしれねえし」
「先輩、それって慰めてるんですか?それとも傷を深くしたいんですか?」
「あ、いや……すまん」

 俺だって考えすぎだと思いたい。だけどじゃあそれ意外に理由があるのかと聞かれるとそれもないわけで。

 遠距離で寂しい想いをさせてるのは分かっているつもりだ。だからリオが他の男に乗り換えたとしても文句は言えない立場だということも。

「浮気の基準って何なんでしょう……」
「そりゃお前、ヤッてるかヤッてないかだろ」
「真面目に聴いてるんですけど」
「俺も真面目に答えてんだけど」
「……やっぱ浮気の基準って男の懐の深さを計られてる気がする」
「地味にスルーしてんじゃねえよ」

 先輩の意見は一度置いておくとしても、浮気なんて考えたこともなかったから想像がつかない。

 しかもリオの相手は年下なわけで、立場上一緒にご飯に行ったりとかはあるのかもしれないし、そうでなくても世話好きな奴だから色々と面倒を見てやっているとしたら、それは浮気の対象じゃないという事になる。

 だとしたらいよいよ先輩の言っていた通り、一線を越えたかどうかで浮気の有無を確かめるしかないわけだ。

「先輩は彼女に浮気とかされたことありますか」
「何だよいきなり」
「いや、浮気を見抜く術を知ってるなら教えて貰おうかと……」

 すると先輩は途端に目を泳がせ、パイプ椅子の背にあずけた片腕を小刻みに震わせながら言った。

「ま、まあ、俺はされたことねえけどな?俺の友達がされた時に、言ってた事ならあるな……俺の友達だぞ?俺じゃねえからな?」
「ああ……はい」

 先輩が彼女に(浮気)されたらしい。それにしても嘘が下手すぎる。

「相手が電話に出なかった時、言い訳をしてきたら要注意だそうだ。ここで重要なポイントなのは、此方が聞いていないにも関わらず“友達と○○行ってた”などのアリバイ証言をしてくることにある」
「アリバイって、刑事じゃあるまいし」
「いいから人の忠告は素直に聞けよ」
「それで、他には何かありますか」
「後はそうだな、通話とかの時間が短くなるのも要注意だな。まあ俺の……じゃなくて俺の友達の経験に基づく意見だけど」

 先輩のセリフに心の中とはいえ突っ込むのにも疲れてきたので敢えてスルーする。

 とにかく、家に帰ってもう一度連絡してみよう。それで出てくれなきゃメールでも何でもしてやればいいわけだし。

「先輩、ありがとうこざいました。俺帰りますね」
「え、もういいのか?」
「はい、ここでウジウジしてても状況は変わらないんで」
「ま、そうだな、健闘を祈ってるよ」

 そう言って笑みを浮かべた先輩にもう一度頭を下げて「お疲れ様でした」と言ってから俺はロッカールームを退散した。

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