髪の毛の悩みなら公女様にお任せあれ!~ヘアスタイルから始まる領地改革
どんな男性達が来ているのかはもちろん気になる。なにせ将来、義理の兄になるかもしれないのだから。
でもそれ以上に女性達の衣装やメイク、ヘアスタイルが気になって仕方がない。
キラキラしているものが好きで見たくなるのは、女の性だと思う。
「わぁー、カワイイ〜! 最近はクロシェ刺繍がトレンドみたいね。みんな着ているわ。それにブルーとかイエローグリーンみたいな爽やかな色味が多いわね」
「ヘアはアップスタイルが主流だったけど、ハーフアップの人が半数以上はいそう。長く美しい髪をアピールできるものね」
低木の影から会場内をチラチラと見ては独り言を呟いていると、庭へと繋がる大きな窓から姉がでてきた。
外の空気でも吸いに来たのか、空を見上げるようにして「ふぅ」と息をついている。
「ベロニカお姉様」
「きゃあっ! ……ルシアナ?」
えへへ、と木の影から顔を出すと、ベロニカは周りに誰もいないか確認してからこちらへやって来た。
「何をしてるの、こんな遅くに」
「だってパーティーの様子を、少しでいいから見てみたかったんですもの」
「全くもうっ、仕方のない子ね」
そう言って姉はポンポンとルシアナの頭を撫でた。ベロニカとルシアナは時々喧嘩もするけれど、結構仲のいい姉妹だ。
「ねぇそれでお姉様、良い殿方はいた?」
「こら、ルシアナ!」
「だってぇ、お姉様にとって生涯の伴侶を決める大切なことでしょうけど、わたくしにとっても大事なことですわ。だってお姉様の旦那様は、わたくしにとってのお兄様なんですもの」
むぅーっと口を尖らせて抗議すると、ベロニカは「仕方ないわね」ともう一度困ったように笑った。
「……ええと、そうね。ウィンストン・バルドー様とちょっとだけ、その……いい感じかしら」
「以前からアプローチされているあの男性ですわね! それじゃあ……!」
「でもそれだけじゃ貴族の結婚は決まらないって、あなたも知っているでしょう?」
姉の言う通り。
貴族同士の結婚は、好いた惚れたでは決まらない。もっとずっと戦略的で味気ないものだ。
それに当人同士の気持ちよりも、当主や父親の意見が絶対的に反映されてしまう。
「それなら尚更、決まったも同然ではありませんか。バルドー家は今、勢いがありますもの」
「どうかしら。お父様はバルドー家をよく思っていないみたいだもの」
話題に上がっているウィンストン・バルドーは男爵家の三男で、バルドー家は今ノリにノッている。
バルドー家の当主ホルレグワス男爵はやり手な事業家なようで、葉巻の輸入取り引きで随分と儲けているらしい。
これまでたばこといえばパイプで吸うのが一般的だったが、何年か前からホルレグワス男爵が葉巻の輸入をはじめて以降、パイプよりも手軽だということで貴族の社交場で人気となっている。
男爵はその葉巻事業で儲けた金で貧乏貴族から土地を買い上げ、領地を拡大していると新聞記事で目にしたことがある。