髪の毛の悩みなら公女様にお任せあれ!~ヘアスタイルから始まる領地改革

 父を初めとして多くの貴族達は、こうしたバルドー家の金にものを言わせて土地を買い漁る行為をよく思っていない。「成り金野郎」なんて汚い言葉で非難する者もいるくらい、貴族の世間では嫌われている。

 そんなバルドー家の三男坊がベロニカに近付いてくるのは、もしかしたらスタインフェルドの名が欲しいだけなのでは? と勘ぐってしまう。
 先々代が王弟、と随分遡るけれど、我が家は王家の血が混じっている。
 裕福さで言えばバルドー家の圧勝。けれど血筋で言えば我が家の方に軍配が上がる。
 ウィンストンが姉にアプローチしてくるのは、姉に好意を持っているからではなかったとしたら……。

 そんな考えがルシアナの頭を巡ったが、それは言うべきではない。と出かかった言葉をグッと飲み込んだ。

 お姉様はウィンストン様からくる御手紙を、いつも嬉しそうに受け取っていたものね。
 真実の愛だと信じたい。

「お父様やお爺様は自分自身の気持ちよりも、スタインフェルド家と領民にとってどうするべきかでお決めになると思いますわ。お金って大事ですもの。もちろんそこにお姉様の気持ちが加わればなおさら」
「そうね。お父様もお爺様も頑固者でないのが救いだわ」

 うふふ、と二人で笑い合うと、ベロニカが立ち上がって身だしなみを整えた。

「私はもう戻るわ。ルシアナもそろそろ戻らないと、ベッドに居ないことがモニカにバレてしまうわよ」
「うーぅ、こわいっ! それじゃあお姉様、良いひと時を……」

 お過ごし下さい。と言おうとしたが、ベロニカが何故かもう一度、ルシアナの隣に素早くしゃがんで座りなおした。

「どうしたんです?」
「しーっ」

 ベロニカが投げる視線の先を見ると、僅かに開いた窓から白い煙がうっすらと立ち上り、ハーブでも燻したかのような濃厚な香りが漂ってきた。

 シガールームで男たちがたばこを吸っているようだ。

「この声……ウィンストン様だわ」

 窓が開いているので話し声も割とハッキリと聞こえてくる。想い人の声が聞こえてきて反応したらしい。

 ウィンストンがどんな人なのか見たくなったルシアナは、バレないよう慎重に、窓からシガールームの中を覗き見た。

「一番手前に座っている方?」

 ごく小さな声で姉に聞くと、コクコクと頷き返された。
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