髪の毛の悩みなら公女様にお任せあれ!~ヘアスタイルから始まる領地改革
「実はね……ケイリーがルシアナを、エスコートしてくれたらいいんじゃないかって思っていたのよ」
「ええ?! 」
「私からルシアナに提案して、無理やり舞踏会に引っ張り出すのは良くないでしょ? だからケイリー自ら申し出てくれるのを待っていたんだけど……。ダンスの練習に誘うまでは出来たのだから、その先もって思ったけど、なかなか難しいわね」
口を開きかけては閉じていた理由が、まさかエスコートの申し出だったとは。
人目を避け、引きこもり生活をしているケイリーが迷うのも無理はない。
とはいえ、ルシアナにはもう相手がいる。今更、他にエスコート役が見つかったからってお断りするのは、失礼じゃないだろうか。
「ですがベアトリス様、もう手遅れですよ。王宮騎士団の方に頼んでしまったではありませんか」
「ああ、彼ね。一応保険のために声は掛けたし了承して貰ったけど、断ったっていいのよ。だって彼、『いつも隣で微笑んでいてくれるような、穏やかで清楚な人がタイプです』って以前言っていたもの。今度別の女性を紹介してあげればいいし、それに王子が代わりに出るのだから、文句なんて言えっこないわ」
……ベアトリス様。今軽く、わたくしをディスりましたよね?
まあそれは置いといて。
「それなら良いですが……。ケイリー様はお誘いして下さるでしょうか」
ルシアナだって、今回の舞踏会がケイリーにとっての契機になればいいとは思う。
でももう舞踏会は明後日。
ケイリーの決心がつかないまま、当日を迎えることになりそうだ。
「出たいって気持ちは絶対にあるわ。だって私がどの男性を紹介しようか悩んでいたら、止めようとしたくらいだもの。ルシアナが隣にいてくれたらケイリーはきっと大丈夫」
な、な、な、なんですか、その話は?!
わたくしが他の男性と踊るのが嫌ってこと?
ルシアナはてっきり、お嫁に行くベアトリスを安心させるために、自分は大丈夫だという姿を見せたいのだと思っていた。
ケイリー様にとってのわたくしって、一体何なのかしら。
そんな疑問が湧かないでもないが、ケイリーに表舞台に出たい意思があるのなら、ルシアナも最後まで待ってみようと黙っていることにした。