髪の毛の悩みなら公女様にお任せあれ!~ヘアスタイルから始まる領地改革
ウィンストンの着ている服や装飾品が、パッと見ただけでも豪華なことがわかる。
べっとりとオイルが塗りたくられたやや長めの髪は、オールバックスタイルにビシッと決め込まれ、細身でスラッとしたイケメンだ。
ちょっと成り金趣味な感じがルシアナ的には「ないなぁ」なんて思ってしまったが、姉の趣味を批判するつもりはもちろんない。
「素敵な方ね」と小声で耳打ちすると、頬を緩ませて頷いている。
やはりお姉様とウィンストン様の仲を応援しましょ。
お姉様をこんな顔にして下さる方なんだもの。
このままここにいては、男たちの会話を盗み聞きしているようなもの。行きましょう、とベロニカに声をかけようとしたところで、気になる会話が耳に入ってきてしまった。
「おいウィンストン、ベロニカ様とはどうなんだよ? 前から随分とアプローチしていたし、今日だっていい感じじゃなかったか」
「おいおい、こんな所で。本人が聞いているかもしれない場所でウィンストンも答えられないだろ」
一拍の間の後にウィンストンがふんっ、と鼻を鳴らす音が聞こえた。
「ベロニカならさっきから姿を見ないから、化粧直しにでも行ったんだろ。バウダールームはこことは反対側だ」
ベロニカぁ?
今ウィンストン様、お姉様を呼び捨てにしたわね?
普段から呼び捨てにし合う中だったのかと姉の方をちらりと見たが、当の本人も初めての事だったのか目を見開いている。
「女性の化粧直しは長いからな」
「ああ、特にあの頭を直すんじゃな。見ただろ? あれじゃあジャングルだ。いくらハーフアップが流行りだからってあのもじゃもじゃ頭でやるなよなって話しだ。少しでもマシになるように全部まとめりゃいいものを」
「あっはっは! おいおいウィンストン、お前いくら本当の事だからって、そりゃぁないだろ」
「俺はてっきり、お前はベロニカ嬢に夢中なんだと思ってたんだが、その言いようじゃ違うみたいだな」
「俺がベロニカに夢中ぅ?」
ケタケタと笑うウィンストンの声は、先程までの甘い声とは違いひどく耳障りなものになった。