髪の毛の悩みなら公女様にお任せあれ!~ヘアスタイルから始まる領地改革
26. ルシアナ、魔法使いになる
舞踏会は夕方から始まるが、王宮内は朝から皆忙しそうに、使用人たちが動き回っている。
参加者であり主役の一人でもあるルシアナも、今回は例外ではなく朝から身支度に忙しい。
ドレスよしっ! 靴よしっ! アクセサリーよしっ!
前日の夜にきちんと準備してから寝たので、衣装は揃っている。
ベアトリスの当日の支度は、ほかの侍女がきっちりやってくれるので問題ない。
メイクとヘアセットはしたので、あとは着るだけ。
その前に……。
「さぁて、行くわよ」
ルシアナ愛用の道具が詰め込まれた鞄を手に取り、ケイリーの部屋へと向かった。
「ケイリー様、ルシアナです」
ノックをして呼びかけると、すぐにドアが開いた。
「ルシアナ? どうしたの。今日は忙しい……うわっ」
ケイリーの反応を見ている余裕などない。早く支度を済ませないと。
ルシアナは床が汚れないように大きな布をひろげ、その上にイスを置いてポンと背もたれを叩いた。
「ケイリー様はとりあえず、こちらに座ってください」
「座ってって……一体何をする気?」
「もちろん、身だしなみを整えるのですわ」
鞄から髪切り鋏を取りだしたルシアナは、にんまりと笑いながら刃を動かして見せた。
「何を言って……」
「いいから、いいから。座ってくださいませ。わたくしがいい具合にして差し上げますから。ね?」
戸惑うケイリーの背中を押して、無理やりイスに座らせた。
実はルシアナだって凄く緊張している。
こんな方法で、ケイリーの心を動かせるのか分からない。
けれど他に、ルシアナが出来ることは思いつかなかった。