髪の毛の悩みなら公女様にお任せあれ!~ヘアスタイルから始まる領地改革
 髪のカットを終えて、そのまま顔剃りへ。
 背もたれの倒れたイスはこの部屋にはないので、やりにくいけれどカウチに横になってもらった。
 ルシアナのただならぬ気配に、ケイリーは黙って従うことにしたようで、大人しくされるがままになっている。

「動かないで下さいね」
「剃刀も使えるの?」
「もちろんですわ」

 絶対に顔を傷つけないよう、慎重に。
 深剃りすると切ってしまう可能性がある。
 深すぎず、かと言って剃り残しが目立たないよう浅すぎず。

 ケイリーは元々肌がきれいだし髭も濃くはないので、剃り終わると女性も羨むようなツルツル・スベスベの素肌になった。

 外で控えていたモニカとケイリー付きの侍従に湯を持ってきてもらい、軽く洗髪をして切った髪の毛を洗い流し、ドライヤーとオイルで仕上げ。
 これだけでも十分男前だが、ルシアナの手はまだ止まらない。鞄から更に、化粧道具を取り出した。

「な、何をする気?」

 ずっと黙っていたケイリーが、素っ頓狂な声を上げた。

「うふふ。傷跡にこうしてちょこっと塗れば……」

 傷跡の上に、ブラシでササッとメイクを施していく。前世の世界ほどコスメは豊富ではないが、それでも何もしないよりはずっと薄く、ぼやけて見える。

「さあ、完成しましたわ。鏡でご自分の姿を見てください」

 ダンスの練習用にと置いてくれた大きな姿見の前に、ケイリーの手を引いて立ってもらった。

 どうか、わたくしの想いが届きますように。

 半ば願うように、ルシアナはケイリーを一歩後ろから見つめる。
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